NYPEフォームによる定期用船中、用船者がOcean Routesの推奨に従い北方の大圏航路を航行するよう指示したにもかかわらず、船長がより南方のrhumb line routeを選択したため、航海時間及び燃料消費が増加したことについて、船主の契約違反及び航海過失免責の成否が争われた事案である。
貴族院は、NYPE8条の「utmost despatch」及び用船者のemploymentに関する指図遵守義務を重視した。北方航路は最短かつ通常の航路であり、Ocean Routesの実績からも合理的な航路であったところ、船長がこれを拒否する合理的理由は認められなかった。用船者による航路指示は、単なる操船上のnavigationではなく、船舶のスケジュール、商業的運用及び収益能力に関わるemployment上の指図に当たるとされた。
もっとも、船長は船舶・乗組員・貨物の安全について最終的責任を負い、用船者の指図が契約上引き受けていない危険に船舶をさらす場合には拒否することができる。しかし本件では、北方航路に特段の危険があるとの立証はなく、船長の過去の台風被害への懸念も合理的な拒否理由とは認められなかった。
また、ヘーグ・ヴィスビー・ルール4条2項(a)の航海過失免責も適用されなかった。問題となったのは操船技術上の誤りではなく、合理的理由なく契約上要求された航路を選択しなかったことであり、これはnavigation又はmanagement上のerrorではないとされた。したがって、船主はNYPE8条違反について責任を負い、仲裁判断を取り消した下級審判断は誤りであるとして、用船者の上告が認められた。