Briety Shipping Inc v Trafigura Maritime Logistics Pte Ltd [2026] EWHC 1714 (Comm)

LNG船Tenergyの5年間の定期用船契約における用船料算定式の解釈が争われた事案である。用船料はJKMとTTFという2つのLNG価格指標の差額に連動し、最低日額5万米ドル、最高14万5,000米ドルとされていた。船主Brietyは、JKM-TTFがマイナスとなる場合も絶対的な差額として扱い、一定額を超えれば用船料が上昇すると主張したのに対し、用船者Trafiguraは、差額がマイナスの場合には   続きを読む…

ADM Industries Centers Ltd v Inerco Trade SA [2026] EWHC 1873 (Comm)

GAFTA Form 48を組み込んだウクライナ産トウモロコシ60,000MTのCIF売買について、Black Sea Grain Initiative下のJCC検査停止により船舶が黒海へ進入できず、船積みが遅延したことから、Force Majeure条項の適用、通知期限及び船積期間延長の解釈が争われた事案である。売主はClause 20のForce Majeureを主張したが、買主は通知が遅れた   続きを読む…

Trafigura PTE Ltd v Société Nationale de Raffinage [2026] EWHC 1914 (Comm)(Michael Green J)— 30 July 2026

英国裁判所の専属管轄条項を含む石油製品売買契約において、買主が外国裁判所に信用状に基づく支払の停止を申し立てた場合、その手続が、外国での申立てを許容する「保全的、中間的又は暫定的措置」の例外に該当するか、また、売主が anti-suit injunction(ASI)により当該外国手続を差し止めることができるかが争われた。 TrafiguraはSONARAにガソリンを販売し、代金の一部は取消不能信   続きを読む…

Trans Trade RK SA v Sebat Shipping and Trading Co [2026] EWHC 1761 (Comm)

燻蒸後の大麦貨物から高濃度のホスフィンガスが検出され、揚荷開始まで約2か月半の遅延が生じた事案について、船主の代替的な損害賠償請求を仲裁廷へ差し戻すべきかが争われたものである。先行判決は、船主が提出したNORが無効であったため、レイタイムは開始せず、デマレージ請求は成立しないとして仲裁判断を変更した。これを受け、船主は、用船契約11条に基づく燻蒸による時間損失及び後続契約の逸失利益請求を再検討させ   続きを読む…

Transatlantica Commodities Pte Ltd v EuroChem Trading GmbH [2026] EWHC 1494 (Comm)

COAに基づく10月積みの第三船について船主が契約どおりの本船を手配できず、傭船者が代替船を手配した後、11月に別の船積みが行われたことをもって、第三船の遅延履行と評価できるかが争われた。船主は、11月のFriedrich Schulteによる船積みは、10月に予定されていた第三船の遅延履行にすぎず、傭船者は契約価格と代替船市場価格との差額を請求できないと主張した。 裁判所は、COA上の各船積み義   続きを読む…

Oceanus Capital Sarl v Lloyd’s Insurance Co SA(The Vyssos)[2026] EWCA Civ 863

船主がTrading Warrantyに違反して本船をウクライナ領海へ航行させ、機雷により全損となった場合、抵当権者がMortgagee’s Interest Insurance(MII)に基づき保険金を請求できるかが争われた。 保険者は、追加戦争危険保険のカバーノートが偽造であったことが損失の近因であり、MIIが担保する危険には当たらないと主張した。 しかし控訴院は、MIIは抵当権者自身の本船に   続きを読む…

Cometsambre SA v Lloyd’s Insurance Company SA [2026] EWHC 1837 (Comm)

スクラップ貨物の火災について傭船者責任保険の補償を求めたCometsambreに対し、保険者が過去の複数の火災の不告知を理由として2022年保険契約を取り消せるかが争われた。 裁判所は、2020年から2021年にかけて、船上火災3件と岸壁上の火災2件が短期間に発生していたことは、慎重な保険者が引受判断に際して考慮する重要な事情であったと判断した。実際に保険請求へ発展していない火災や、船積前の岸壁火   続きを読む…

Great Asia Maritime Ltd v Orion Shipping and Trading LLC(The Lila Lisbon)[2026] UKSC

Saleform 2012第14条に基づき、売主がCancelling Dateまでに本船を引き渡せず、買主が契約を解除した場合、売主の違反がrepudiatory breachに達していなくても、買主が市場価格上昇によるloss of bargain damagesを請求できるかが争われた。 最高裁は、第14条が、売主の「proven negligence」による不引渡しについて、買主に解除権だ   続きを読む…

Songa Product and Chemical Tankers IV AS v Gardsea Shipping Inc [2026] EWHC 1559 (Comm)

船舶売買代金を「3 Banking Days以内」にノルウェーのエスクロー口座から支払う義務について、最終日の期限がノルウェー時間の午前0時か、Banking Daysの定義に含まれる最も西側の地域であるハワイ時間の午前0時かが争われた。 仲裁廷は、Banking Daysの定義に複数の国・地域が列挙されていたことから、買主にはハワイ時間の午前0時まで支払猶予があり、売主によるノルウェー時間午前0   続きを読む…

The Solong [2026] EWHC 1211 (Admlty)

Solongが錨泊中のStena Immaculateに衝突した事故について、Solong側が責任制限を主張できるかが争われた。 責任制限を否定するには、船主自身の行為又は不作為が、損害発生の蓋然性を認識しながら無謀に行われたことを立証する必要がある。裁判所は、条約上の「such loss」は、実際に生じた特定の損害ではなく、その種類の損害を意味すると判断した。もっとも、責任制限を否定するには、船   続きを読む…

Tonzip Maritime (Singapore) PTE Ltd v 2 Rivers PTE Ltd (The “Catalan Sea”) [2026] EWCA Civ 641

傭船者が指定したロシア産石油貨物について、制裁対象者が荷送人企業を実質的に支配している可能性があるとして、船主が積載を拒否できるかが争われた。 傭船契約の制裁条項は、船主の合理的判断により、航海指図への従事が船主、本船、船員又は保険者を制裁にさらす場合、船主が当該指図を拒否できると定めていた。控訴院は、「制裁にさらす」とは、実際の制裁違反が確実又は可能性として過半であることを要せず、現実的な制裁リ   続きを読む…

Aquilo Shipping Inc v SRTT Marine Trading & Services Pte Ltd [2026] SGHC 79

船舶売買後に、引渡し前の貨物事故に関する請求により本船が差し押さえられた場合、売主がSaleform 2012第9条の補償義務に基づき、差押解除のための担保を直ちに提供する義務を負うかが争われた。 裁判所は、第9条の補償は、引渡し前に発生した事情に基づく請求が引渡し後に本船へ向けられた場合にも適用され得るとした。したがって、第三者請求の当否が未確定であることだけでは、売主は補償責任を免れない。もっ   続きを読む…

FinCo International AG v Integra Petrochemicals Europe AG [2026] EWHC 727 (Comm)

石油製品売買契約の条件がex shipからCIFに変更された後も、当初の揚地到着日が確定的な納期として維持されたか、また、買主が売主の船舶指名を有効に拒絶したかが争われた。 裁判所は、CIFへの変更によって当初の納期が積地での船積日へ変更されたわけではないとした一方、BP GTCsの適用により、揚地到着日は確定期限ではなく目安にすぎないと判断した。売主は、通常の航海期間を前提としてその期間内に到着   続きを読む…

Trans Trade RK SA v Sebat Shipping and Trading Co [2026] EWHC 950 (Comm)

揚地で本船が到着船となる前にNORを提出したためNORが無効であった場合、荷役開始時から当然にlaytimeが進行するかが争われた。 仲裁廷は、荷役開始によりlaytimeが開始すると判断し、揚地で約84万米ドルの滞船料を認めたが、商事裁判所は、有効なNORが提出されていない限り、laytimeは原則として開始しないと判断した。荷役開始だけでNORの無効が当然に治癒される、いわゆる「deemed   続きを読む…

The Goliath [2026] HCA 15(Australia)

Goliath号が港内でタグボート2隻および岸壁に衝突し、タグボートが沈没した事故について、沈没船の撤去費用や流出油の処理費用を含む請求に対し、Goliath船主が責任制限を主張できるかが争われた。 1976年責任制限条約は、船舶の運航に関連する物的損害を原則として責任制限の対象としているが、オーストラリアは、条約上認められた留保を行い、沈没船の引揚げ、撤去、破壊または無害化に関する請求を責任制限   続きを読む…

Mamancochet Mining Ltd v Aegis Managing Agency Ltd [2018] EWHC 2643 (Comm)

海上貨物保険の保険者が、制裁条項を理由として、イラン向け貨物の盗難損害に対する保険金支払を拒否できるかが争われた。 制裁条項は、保険金の支払が保険者を制裁、禁止又は制限に「さらす」範囲で、保険者は支払義務を負わないと定めていた。裁判所は、保険者が支払を拒否するには、保険金支払が実際に適用法令上禁止されていることを、蓋然性の均衡により立証しなければならないと判断した。制裁当局が誤って違反と判断する可   続きを読む…

Argoglobal Underwriting Asia Pacific Pte Ltd v OCBC [2026] SGCA 14

曳航中に転覆したTeras Lyzaについて、損失が海上固有の危険によるものか、また、推定全損が成立するかが争われた。 控訴院は、海水流入が突然かつ予期せず発生しただけでは、海上固有の危険は立証されないと判断した。被保険者は、海水流入を生じさせた偶発的な事故を蓋然性の均衡により立証する必要がある。原因不明のまま船舶が失踪した場合などには海上固有の危険を推定できるが、この推定は、船舶が堪航性を備え、   続きを読む…

SLB and Others v PAK and Others [2026] EWHC 449 (Comm) – King’s Bench Division, Commercial Court (Mr Justice Calver) – 2 March 2026)

造船所が契約締結後120日以内にRefund Guaranteeを提供しなかったことが、買主に契約解除だけでなく、逸失利益等の損害賠償を請求できる重大な契約違反となるかが争われた。 造船契約には、Refund Guaranteeが提供されなければ買主は前払分割金を支払う必要がなく、120日以内に保証が提供されない場合には契約を解除できる規定があった。買主は、この期限が契約上の「condition」   続きを読む…

The Kiveli v The Afina I [2026] EWCA Civ 251

両船の関係が正面衝突状況としてRule 14の適用を受けるか、それとも横切り状況としてRules 15~17が適用されるかが争われた。 控訴院は、両船はほぼ反航する針路にあり、衝突のおそれが生じた時点でRule 14が適用されたと判断した。Rule 14(b)は固定的な角度基準を定めるものではなく、他船のマスト灯が一直線又はほぼ一直線に見える場合、又は両舷灯が見える場合のいずれかで足りるとされた。   続きを読む…

Oceanus Capital Sarl v Lloyd’s Insurance Co SA (The Vyssos) [2025] EWHC 3293 (Comm)

船主が戦争保険のTrading Warrantyに違反してウクライナ領海へ航行した結果、機雷により全損となった場合、抵当権者保険(Mortgagee’s Interest Insurance:MII)の保険金が支払われるかが争われた。 船主は追加戦争危険保険を手配したと抵当権者に説明したが、そのカバーノートは偽造であり、船主保険はTrading Warranty違反を理由に保険金支払を   続きを読む…

SCMA Preliminary Final Award(Supplytime 2017)

本船の技術的不具合による中断を含む用船関係終了後、当事者間で合意された未払残額について、傭船者が高額な反対請求を主張して支払いを拒めるかが争われた。 船主は、当事者間で未払用船料等を減額した上で、一定額を分割払いする和解合意が成立したと主張した。傭船者も和解合意の存在自体は争わなかったが、その範囲は不明確であり、代替船費用やプロジェクト遅延損害を反対請求できると主張した。仲裁廷は、請求書、クレジッ   続きを読む…

Mercuria Energy Trading SA v Onex DMCC [2026] EWHC 130 (Comm) – King’s Bench Division, Commercial Court (Lionel Persey KC, sitting as a Judge of the High Court) – 22 January 2026

燃料油売買契約に記載された有機塩素4.1ppmという数値が保証値であり、5ppmの貨物を引き渡した売主が契約違反となるかが争われた。 裁判所は、契約上、有機塩素値は「typicals」として記載され、別途の保証仕様には含まれていなかったと指摘した。さらに、一般条件はtypicalsについて保証せず、商品の品質・説明の一部にもならないと明記していたため、4.1ppmは保証値ではないと判断した。また、   続きを読む…

Pleon Ltd v Leonis Yachting Ltd(The Maltese Falcon)[2025] EWHC 3144 (Comm)

ヨット売却後も売主が一定期間無償で使用できる契約の下、その使用期間中に機関故障が生じた場合、その不堪航性のリスクを売主と買主のどちらが負担するかが争われた。 売買契約上、ヨットは「現状有姿」で売却され、売主は品質や目的適合性について責任を負わない一方、使用・アクセス契約では、買主がヨットを稼働可能かつ堪航性のある状態に保つ義務を負っていた。仲裁廷多数意見は、引渡しから売主の使用開始までの期間が短く   続きを読む…

Valency International Pte Ltd v JSW International Tradecorp Pte Ltd and Others [2026] SGCA 1

船荷証券を担保として銀行に差し入れた金融業者が、貨物の無断引渡しについてconversionを理由に売主や船社を訴えることができるかが争われた。 Valencyは、船荷証券をHSBCに質入れした後、Trust Receiptに基づいて原本の返還を受けていた。しかし控訴院は、この返還は貨物の受取りや売却を行わせるための限定的なものであり、銀行の担保権は消滅していなかったと判断した。そのため、質権が存   続きを読む…

Moeve Trading SAU v Mael Trading FZ LLC [2026] EWHC 17 (Comm)

買主が信用状を開設したことで売買代金の支払義務を果たしたことになるか、また、船荷証券が買主に引き渡されていないことを理由に代金支払を拒めるかが争われた。 裁判所は、信用状による支払は、契約に明確な反対の定めがない限り、通常は「条件付支払」にすぎず、信用状の開設だけで買主の代金債務が消滅するものではないと判断した。本件では、貨物はFOB条件により船積時に買主へ引き渡され、所有権も買主に移転していた。   続きを読む…

Posh Projects Pte Ltd v Owners/Demise Charterers of the Yangtze Harmony [2026] SGHC 3

ロンドン仲裁の結果を担保するためシンガポールで差し押さえられ、売却代金が裁判所に保管されていた本船について、仲裁判断取得後にin rem手続の停止を解除し、その売却代金から回収できるかが争われた。 裁判所は、仲裁合意を理由にin rem手続が停止されても、その停止は手続を一時的に止めるにすぎず、差押えによる担保機能まで失わせるものではないと判断した。仲裁判断が履行されない場合、裁判所には停止を解除   続きを読む…

Unity Ship Group SA v Euroins Insurance JSC(The Happy Aras)[2026] EWHC 7 (Admlty)

座礁事故後に船主が求めた共同海損分担金について、本船の不堪航性を理由に貨物保険者が支払いを拒否できるかが争われた。 保険者は、本船には適切な航海計画がなく、船長も能力を欠いていたため、船主がHague Rules上の堪航性確保義務を尽くしていないと主張した。裁判所は、航海計画には複数の不備があったものの、その計画どおり航行していれば座礁は生じなかったため、航海計画の欠陥自体は事故原因となる不堪航性   続きを読む…

Olam Global Agri Pte Ltd v Holbud Ltd [2025] EWHC 3187 (Comm)

売主がウクライナ港閉鎖を理由に誤って不可抗力を宣言し契約を履行しなかった場合、買主が実際に契約を履行できる状態であったことを立証せずに、多額の損害賠償を請求できるかが争われた。 買主は当初Finderを船積船として指名したが、その後同船を別の航海に投入していた。仲裁廷は、売主が誤って不可抗力を宣言した以上、買主の履行可能性は問題にならないとして、市場差額による損害賠償を認めた。裁判所は、契約違反に   続きを読む…

Skyros Maritime Corporation v Hapag-Lloyd AG(The Skyros and The Agios Minas)[2025] EWCA Civ 1529

定期傭船者が本船を期限後に返船したものの、船主は既に本船を第三者へ売却しており、適時に返船されても再傭船する予定がなかった場合、船主が市場用船料と契約用船料との差額を損害として請求できるかが争われた。 第一審は、船主には再傭船の機会がなく、現実の逸失利益も生じていないため、通常の市場差額損害は認められないと判断した。また、契約用船料が定められている以上、量的報酬、使用利益損害又は仮想的な交渉額に基   続きを読む…

MS Amlin Marine NV v King Trader Ltd [2025] EWCA Civ 1387

被保険者である傭船者が倒産した場合でも、第三者請求者が保険者に直接請求するためには、まず被保険者自身が損害賠償額を支払っていることを求める「pay to be paid」条項に従う必要があるかが争われた。 第三者請求者は、保険契約の基本的な補償条項とpay to be paid条項は矛盾しており、補償条項を優先すべきであると主張した。しかし控訴院は、保険金請求権自体は責任確定時に発生するものの、そ   続きを読む…