Trafigura PTE Ltd v Société Nationale de Raffinage [2026] EWHC 1914 (Comm)(Michael Green J)— 30 July 2026

英国裁判所の専属管轄条項を含む石油製品売買契約において、買主が外国裁判所に信用状に基づく支払の停止を申し立てた場合、その手続が、外国での申立てを許容する「保全的、中間的又は暫定的措置」の例外に該当するか、また、売主が anti-suit injunction(ASI)により当該外国手続を差し止めることができるかが争われた。 TrafiguraはSONARAにガソリンを販売し、代金の一部は取消不能信   続きを読む…

Trans Trade RK SA v Sebat Shipping and Trading Co [2026] EWHC 1761 (Comm)

燻蒸後の大麦貨物から高濃度のホスフィンガスが検出され、揚荷開始まで約2か月半の遅延が生じた事案について、船主の代替的な損害賠償請求を仲裁廷へ差し戻すべきかが争われたものである。先行判決は、船主が提出したNORが無効であったため、レイタイムは開始せず、デマレージ請求は成立しないとして仲裁判断を変更した。これを受け、船主は、用船契約11条に基づく燻蒸による時間損失及び後続契約の逸失利益請求を再検討させ   続きを読む…

Posh Projects Pte Ltd v Owners/Demise Charterers of the Yangtze Harmony [2026] SGHC 3

ロンドン仲裁の結果を担保するためシンガポールで差し押さえられ、売却代金が裁判所に保管されていた本船について、仲裁判断取得後にin rem手続の停止を解除し、その売却代金から回収できるかが争われた。 裁判所は、仲裁合意を理由にin rem手続が停止されても、その停止は手続を一時的に止めるにすぎず、差押えによる担保機能まで失わせるものではないと判断した。仲裁判断が履行されない場合、裁判所には停止を解除   続きを読む…

Bank of America NA, Singapore Branch v Owners of the Ocean Goby and Ocean Jack [2025] SGHC 183

船舶売却代金に対する代位権を主張するDa Huiが、先行する対人訴訟が手続上不適切として棄却されたため、改めて売却代金を対象とする対物訴訟を提起し、その決着まで既存債権者であるPetroChinaおよびSocGenへの払渡しを停止するよう求めた。 裁判所は、新たな対物訴訟と既存の払渡し手続との間に、停止を必要とする実質的な争点の重複はないと判断した。控訴院もDa Huiに対物訴訟を追行するよう指示   続きを読む…

V and Another v K [2025] EWHC 1523 (Comm)

売船契約をめぐるLMAA仲裁において、売主選任仲裁人が売主代理人法律事務所から過去に複数回選任されていたことを十分に開示しなかったとして、見かけ上の偏見および重大な手続的不公正があるかが争われた。 裁判所は、偏見の判断基準は、公正かつ事情を知る観察者が、仲裁人に偏りがある現実的可能性を認めるかどうかであるとした。ただし、ロンドン海事仲裁では、限られた専門仲裁人と法律事務所の間で、無関係な案件につい   続きを読む…

Berge Bulk Shipping Pte Ltd v Taumata Plantations Ltd and Others [2025] EWCA Civ 876

船荷証券なしで貨物を引き渡した際にShipping社が発行したLOIについて、背後の木材輸出会社らを非開示本人として拘束できるかが争われた。 控訴院は、契約名義人が本人として契約しているように見える場合、別の者を非開示本人とするには、代理人と本人の双方が当該契約について代理関係を意図し、かつ代理人が実際の権限内で行動していたことが必要であるとした。本件では、Shipping社は傭船リスクをFore   続きを読む…

Mediterranean Shipping Co SA and Others v Interglobal Technologies Ltd and Others [2025] EWHC 1464 (Comm)

英国裁判所の専属管轄条項を含む船荷証券に基づく紛争について、荷受人がナイジェリアで提訴・船舶差押えを行ったことから、anti-suit injunctionおよびanti-anti-suit injunctionを認めるべきかが争われた。 裁判所は、船荷証券はMSCのウェブサイト上の標準約款を有効に取り込み、そこに英国法および英国高等法院の専属管轄条項が含まれていたと判断した。また、Intergl   続きを読む…

Mitsui OSK Lines Ltd and Another v The Ship “Yangze 22” [2025] FCA 563

衝突事故により豪州で差し押さえられたYangze 22について、P&I Clubが差し入れたLOUが本船解放に必要な十分かつ適切な担保に当たるかが争われた。 船主側のLOUは、いずれかの国で責任制限基金が設立され、請求がその基金に対して行われるべきと判断又は合意された場合、LOUに基づく請求権が自動的に消滅すると定めていた。裁判所は、船舶解放のための担保は、原告の合理的に主張し得る最大請求   続きを読む…

Marina Developments Ltd v Owners of SY Explorer [2024] EWHC 3531 (Admlty)

2023年Ocean Globe Raceに参加した14隻の帆船について、マリーナ運営会社MDLが相当額の係留料を請求し、そのうち1隻であるSY Explorerを全額の担保として差し押さえた事案である。被告は、係留はスポンサー契約の一環として無償であった、又は契約当事者は自身ではなく豪州法人Ocean Frontiers Pty Ltdであったと主張した。 裁判所は、被告自身が「無料係留の提供は   続きを読む…

Tanga Pharmaceuticals Plastics Ltd and Others v Emirates Shipping Line FZE [2025] EWHC 368 (Comm)

機関故障後に救助及び共同海損が発生した貨物について、荷主らが運送人に救助料等の補償を求めたところ、船荷証券上の請求期限により時効消滅したかが争われた事案である。船荷証券のClause Paramountは、ヘーグ・ルールを契約上取り込み、同ルール第3条6項は貨物引渡しから1年の出訴期限を定めていた。他方、Clause 18は一定の請求を20日以内に書面通知すべきこと、また訴訟は請求書が実際に送達さ   続きを読む…

Jonathan John Shipping Ltd v Continental Shipping Line Pte [2025] SGHC 34

定期用船契約の不当解除を理由として損害賠償を求めるロンドン仲裁に関連し、船主がシンガポールの用船者に対して全世界的資産凍結命令を申し立てた事案である。用船者は、予定された入渠工事が長期化したことを理由に契約を解除したが、船主は解除に正当な根拠がないと主張した。 裁判所は、LMAA仲裁廷には暫定的な差止命令を発する権限がないため、シンガポール裁判所が保全処分を命じることができるとした。その上で、入渠   続きを読む…

Mare Nova Incorporated v Zhangjiagang Jiushun Ship Engineering Co Ltd [2025] EWHC 223 (Comm)

中国の造船所で修繕を受けた船舶Mare Novaについて、出渠後まもなく中間軸受の損傷が判明したことから、修繕業者の契約責任と仲裁判断の適否が争われた事案である。仲裁人は、造船所が修繕品質、軸芯調整及び機器再組立てに関する契約条項に違反したと認定した一方、船主が海上試運転を求めず、修繕完了を承認したことから、造船所の責任はその時点で消滅し、6か月保証条項に基づく一部損害のみを認めた。 船主は、責任   続きを読む…

Lord Marine Co SA v Vimeksim Srb DOO (The Lord Hassan) [2024] EWHC 3305 (Comm)

航海用船契約に基づく運賃が未払となったため、船主が貨物であるウクライナ産トウモロコシ約1万1,000トンに留置権を行使し、仲裁法44条に基づいて裁判所に貨物売却命令を求めた事案である。船荷証券には「Freight Prepaid」と記載されていたが、実際には運賃は支払われず、船主は船荷証券を交付しないまま貨物をトルコの倉庫に保管していた。 裁判所は、貨物が発熱し、虫害及びカビが発生して急速に劣化し   続きを読む…

COSCO Shipping Specialized Carriers Ltd v PT OKI Pulp & Paper Mills and Others [2024] SGCA 50

貨物船Le Liがインドネシアの港湾施設を離岸後、桟橋へ通じる橋梁に接触して損傷させた事故について、荷送人兼施設運営者であるOKIがインドネシアで提起した不法行為訴訟を、船荷証券に取り込まれたシンガポール仲裁条項に反するとして差し止められるかが争われた事案である。第一審は、橋梁損傷請求は船荷証券とは独立した純粋な不法行為請求であり、仲裁条項の対象外として差止めを拒否した。 控訴院はこれを覆し、外国   続きを読む…

Dan-Bunkering (Singapore) Pte Ltd v The Ship “Yangtze Fortune” [2024] FCA 1149

船舶Yangtze Fortuneの司法売却代金について、燃料供給者、貨物関係者及び船主がそれぞれ債権を届け出たところ、船主自身が裸用船者に対する未払傭船料債権に基づき、自船の売却代金へ請求できるか、また各債権の優先順位が争われた事案である。 裁判所は、船主と裸用船者との契約が実質的に売買・融資取引の性格を有していたとしても、船舶の占有・運航支配を裸用船者へ移転する通常の裸用船契約であり、未払傭船   続きを読む…

Euronav Shipping NV v Black Swan Petroleum DMCC [2024] EWHC 896 (Comm)

タンカーOceaniaに保管された原油が米国制裁対象貨物であるとして、船主Euronavが米国司法省へ引渡したことから、貨物権利者Black Swanがマレーシアで損害賠償請求を提起し、ロンドン仲裁の差止めを求めた。これに対し、Euronavがその差止手続をさらに禁止する命令を英国裁判所に求めた事案である。 裁判所は、EuronavとSilk Straitsとの契約に付されたAddendum 2が   続きを読む…

Meck Petroleum DMCC v Owner and/or Demise Charterer of the Vessel Victor 1 and Another [2024] SGHC 165

裸用船中の船舶Victor 1が乗組員の申立てにより差押えられ、司法売却された後、燃料供給者Meckが未払燃料代について売却代金に対する対物訴訟を提起した事案である。問題は、訴訟提起時にCetoがなお裸用船者又は実質的船主であり、人的責任を負う被告として、手続に参加できるかであった。 裁判所は、司法売却の完了により裸用船契約は終了したと判断した。司法売却は、買主に先取特権、担保その他の負担のない完   続きを読む…

China Star Chemical Shipping Ltd v Lingyang Shipping Navigation Ltd (The Lingyang) [2024] MLJU 359

航海用船契約上の紛争について、用船者China Star Chemical Shippingがシンガポール仲裁の担保を得るため、船舶Lingyangをマレーシアで差押えたところ、訴訟の被告とされたLingyang Shipping Navigationは契約当事者ではないとして、差押えの取消し及び不当差押えによる損害賠償を求めた事案である。 用船契約はChina Starと本船の登録船主Oppor   続きを読む…

Unicious Energy Pte Ltd v Owners and/or Demise Charterers of The Ship or Vessel “Alpine Mathilde” (No 2)

米国財務省OFACの制裁対象者リストに指定された用船者Uniciousが、航海用船契約上の貨物引渡しを拒絶した船主に対する仲裁請求の担保としてAlpine Mathildeを差し押さえたところ、船主が不当差押えによる損害賠償を求めた事案である。貨物は制裁上の凍結財産となり、米国法人である船主は、Uniciousへの引渡しにより制裁を受ける危険があった。Uniciousは代理人を介した形式的な転売に   続きを読む…

Djurberg v Thames Properties (Hampton) Ltd and Others [2024] EWCA Civ 549

テムズ川の係留場所を使用させていた者が、未払係留料を担保するためハウスボートを留置する権利を有すると主張し、船舶が持ち去られたことについて占有権侵害による損害賠償を求めた事案である。原告は、その権利が海事先取特権に基づくと主張したが、第一審は請求を却下した。 控訴院は、留置権とは、物に関する債権が弁済されるまでその物の占有を保持する権利であり、占有を失えば留置権自体は消滅するものの、留置権を無視し   続きを読む…

Burrows v Thurlow (The Merlion) [2024] FCA 220

新造ヨットの購入契約に際し、従前所有していたMerlionを下取りとして引き渡した買主Burrowsが、造船会社PMYの倒産後、同船が第三者Thurlowへ移転されたことから、自己がなお所有権又は直ちに占有を回復する権利を有するとして、船舶に対する対物訴訟を提起した事案である。争点は、信託違反、悪意の受領、所有権移転の仮装、横領及び消費者法上の請求が、豪州の海事裁判管轄に含まれるかであった。 裁判   続きを読む…

Dan-Bunkering (Singapore) Pte Ltd v The Ship Yangtze Fortune (No 3) [2024] FCA 219

裸用船中のYangtze Fortuneに燃料を供給したCMETが、司法売却代金への対物請求に参加しようとした事案である。豪州海事法上、裸用船者の債務について船舶に対する対物訴訟を提起するには、請求原因発生時だけでなく、訴訟提起時にも当該者が裸用船者であることが必要とされた。 CMETは、司法売却の条件が成立した2023年3月7日に裸用船契約が履行不能となり終了したため、その時点を基準として売却代   続きを読む…

COSCO Shipping Specialized Carriers Co Ltd v PT OKI Pulp & Paper Mills and Others [2024] SGHC 92

船舶Le Liがインドネシアの港湾施設から離岸した直後にトレッスル橋へ衝突し、橋の一部を崩壊させた事故について、橋の所有者OKIがインドネシアで提起した不法行為訴訟を、船主CSSCが船荷証券中のシンガポール仲裁条項に反するとして差し止めようとした事案である。 船荷証券には、ヘッドCOAの英国法準拠・シンガポール仲裁条項が組み込まれていた。もっとも、裁判所は、OKIの請求は貨物の運送や船荷証券上の義   続きを読む…

Vallianz Shipbuilding & Engineering Pte Ltd v Owner of the Vessel “Eco Spark” [2023] SGHC 353

バージから洋上養殖施設へ改造されたEco Sparkが、シンガポール海事管轄法上の「ship」に該当し、対物訴訟による差押えの対象となるかが争われた事案である。改造業者は未払工事代金約164万シンガポールドルを請求して本件施設を差し押さえたが、所有者は、同施設は海底に脚を固定した自航能力のない魚類養殖場であり、航行に使用される船舶ではないと主張した。 裁判所は、「ship」は「航行に使用される船舶   続きを読む…

JOL and Another v JPM [2023] EWHC 2486 (Comm)

2隻の船舶を裸用船した用船者について、保証会社グループの持株比率低下が契約上のTermination Eventに該当するとして、船主が用船契約を解除し、本船の即時返船を求めた事案である。紛争はLMAA仲裁に付されていたが、船主は仲裁判断を待たず、Arbitration Act 1996第44条に基づき、裁判所に対して本船の返船又は返船のための一切の措置を命じる暫定命令を求めた。 裁判所は、まずL   続きを読む…

The Owners and/or Demise Charterers of the Ship “Edzard Schulte” v The Owners and/or Demise Charterers of the Ship “Setia Budi” – High Court of Malaya at Kuala Lumpur (Ong Chee Kwan J) – 2 August 2023

錨泊中のEdzard Schulteに、曳船Setia Budi等が曳航していたバージSetia Station 2が衝突した事故について、Edzard Schulte側が海事先取特権に基づきSetia Budiを差し押さえたところ、同船所有会社に会社法上の訴訟禁止命令(Restraining Order)が発令されていたことから、対物訴訟の継続に裁判所の許可が必要かが争われた事案である。 裁判所   続きを読む…