Lord Marine Co SA v Vimeksim Srb DOO (The Lord Hassan) [2024] EWHC 3305 (Comm)

航海用船契約に基づく運賃が未払となったため、船主が貨物であるウクライナ産トウモロコシ約1万1,000トンに留置権を行使し、仲裁法44条に基づいて裁判所に貨物売却命令を求めた事案である。船荷証券には「Freight Prepaid」と記載されていたが、実際には運賃は支払われず、船主は船荷証券を交付しないまま貨物をトルコの倉庫に保管していた。

裁判所は、貨物が発熱し、虫害及びカビが発生して急速に劣化していたことから、売却の緊急性を認めた。仲裁法44条は、仲裁手続に関連して裁判所に司法手続と同様の保全権限を与えており、契約上の留置権によって仲裁請求の担保とされている貨物は「仲裁手続の対象物」に該当するとされた。本件では、売却しなければ貨物価値が低下し、留置権の実効性も失われるため、売却を命じる典型的な事案であると判断された。

貨物が既に第三者へ売却されていた可能性も、船主による留置権行使を妨げないとされた。船荷証券は未交付であり、貨物も倉庫業者が船主の代理人として保管していたため、船主は占有を維持していた。もっとも、船荷証券が第三者へ交付され、「Freight Prepaid」との表示を信頼した正当な所持人が存在した場合には、船主が留置権を主張できない可能性があるが、本件ではその問題は生じなかった。裁判所は、船主が損害担保を提供することを条件として、貨物の売却を命じた。