Euronav Shipping NV v Black Swan Petroleum DMCC [2024] EWHC 896 (Comm)

タンカーOceaniaに保管された原油が米国制裁対象貨物であるとして、船主Euronavが米国司法省へ引渡したことから、貨物権利者Black Swanがマレーシアで損害賠償請求を提起し、ロンドン仲裁の差止めを求めた。これに対し、Euronavがその差止手続をさらに禁止する命令を英国裁判所に求めた事案である。

裁判所は、EuronavとSilk Straitsとの契約に付されたAddendum 2が有効であり、紛争をロンドン仲裁に付す合意が存在する可能性は高いと判断した。また、Black Swanが貨物をSilk Straitsを通じてEuronavへ寄託した以上、転寄託の法理により、同仲裁条項がBlack Swanにも拘束力を有する可能性が高い。Black Swanによるマレーシアでの仲裁差止申立ても、仲裁合意に違反する可能性が高い。

もっとも、裁判所は、現段階で仲裁差止命令を禁止することは時期尚早であるとして申立てを却下した。Euronavがマレーシア訴訟で手続上の対応を行ったため、同国裁判所は同社が管轄に服したと判断し、その判断に対する控訴が係属中であった。英国裁判所が直ちに命令を発すれば、マレーシア裁判所の命令に介入し、国際礼譲を害し、手続の重複を招くおそれがある。さらに、Euronavは早期に英国で救済を求めることができたにもかかわらず申立てを遅らせ、自ら現在の状況を招いた面もある。したがって、仲裁合意の存在自体は強く認められたものの、マレーシアでの控訴結果を待つべきとして、当面の申立ては認めなかった。