シンガポールで対物訴訟を提起していた銀行らが、船舶をジブラルタルで差し押さえ・競売した司法管理人らに対し、自己の権利を不当に消滅させたとして責任追及できるかが争われた。
控訴院は、対物訴状の発行により生じるstatutory lienは、直ちに船舶上の完全な担保権となるものではなく、差押えによって担保を取得するための先行的権利にすぎないとした。実際に船舶上の担保的地位を得るのは、原則として差押えが行われた時点であるとされた。また、船舶のジブラルタルでの司法売却は、司法管理人による私的な処分ではなく、抵当権者による担保権実行であった。外国裁判所による司法売却も対世的効力を有し、既存の海事上の権利を消滅させ、船舶を無負担で買主に移転させる。そのため、司法管理人が担保付財産を処分する際の裁判所許可を定めたシンガポール倒産法100条は適用されなかった。銀行らがシンガポールで訴状を発行していたとしても、船舶を実際に差し押さえて自己の地位を確保しなかったことが重視された。さらに、司法管理人が抵当権者と協力して本船をジブラルタルへ航行させたことも、著しく不公正な行為とは認められなかった。その結果、外国での司法売却により銀行らの対物請求権が消滅したとしても、司法管理人および船主に対する責任追及は認められず、銀行らの控訴は棄却された。