Anteaが錨泊中のStar Centurionに衝突し、同船が全損となった後、インドネシア当局の命令に基づきStar Centurion側が負担した難破船撤去費用について、1976年船主責任制限条約に基づく責任制限が適用されるかが争われた事案である。香港法は、同条約2条1項(d)の難破船撤去請求を適用除外としていたため、Antea側は同条1項(a)の「物的損害及びその結果として生じる損失」に撤去費用が含まれると主張した。
香港終審法院は、条約解釈に当たっては国内法上の先入観を排し、ウィーン条約法条約に従って条約文言、目的及び体系を考慮すべきとした。その上で、2条1項(d)が難破船の引揚げ、除去、破壊又は無害化に関する請求を明示的に規定し、18条が締約国にその適用除外を認めていることを重視した。
仮に2条1項(d)を適用除外としても、同じ撤去費用を2条1項(a)の一般的な「結果損害」として責任制限の対象にできるとすれば、18条による留保制度は実質的に意味を失う。そのため、難破船撤去請求については特則である2条1項(d)が支配し、これを適用除外とした香港では、同じ請求を2条1項(a)によって復活させることはできないとされた。
また、2条1項(d)を港湾当局等の公的機関による請求のみに限定し、私人である船主の撤去費用請求には適用しないとの解釈も退けられた。公私を問わず難破船撤去を促進するという政策目的からも、そのような区別に合理性はないとされた。したがって、Star Centurion側の難破船撤去費用は責任制限の対象外であり、Antea側の上告は棄却された。