バージから洋上養殖施設へ改造されたEco Sparkが、シンガポール海事管轄法上の「ship」に該当し、対物訴訟による差押えの対象となるかが争われた事案である。改造業者は未払工事代金約164万シンガポールドルを請求して本件施設を差し押さえたが、所有者は、同施設は海底に脚を固定した自航能力のない魚類養殖場であり、航行に使用される船舶ではないと主張した。
裁判所は、「ship」は「航行に使用される船舶」を含むところ、その判断では現在の使用方法よりも、物理的な設計及び構造上、航行に使用し得る能力があるかを重視すべきとした。「航行」とは、自航能力を必須とせず、一定の方向性をもって水上を一地点から他地点へ移動し、又は曳航され得ることを意味する。
Eco Sparkは自航装置、舵及び航海設備を備えていなかったが、改造前後を通じてバージとしての船体構造を維持し、インドネシアからシンガポールまで実際に曳航されていた。また、海底に固定するスパッドレッグは撤去・格納可能であり、施設を恒久的な陸上構造物に変えるものではなかった。人又は貨物の輸送を目的としないことや、現在は一地点に固定されていることも決定的ではないとされた。
船籍登録や船級の有無は重要な考慮要素ではあるが、それだけで船舶性が決まるものではない。Eco Sparkは海上移動に耐える構造を有し、移動能力も失っていなかったため、法令上の「ship」に該当すると判断された。したがって、海事裁判所は工事代金請求について対物管轄を有し、本件差押えは有効とされた。