新造ヨットの購入契約に際し、従前所有していたMerlionを下取りとして引き渡した買主Burrowsが、造船会社PMYの倒産後、同船が第三者Thurlowへ移転されたことから、自己がなお所有権又は直ちに占有を回復する権利を有するとして、船舶に対する対物訴訟を提起した事案である。争点は、信託違反、悪意の受領、所有権移転の仮装、横領及び消費者法上の請求が、豪州の海事裁判管轄に含まれるかであった。
裁判所は、豪州法上の対物訴訟は、船舶の「占有又は所有権に関する請求」を広く含むとした。Merlionは新造船完成までPMYが保管するにすぎず、所有権は移転していなかったとの信託上の主張は、契約文言が不明確であることから、明らかに成立しないとはいえなかった。また、ThurlowがPMYの財務状況や取引経緯を知りつつ船舶を取得したとの悪意の受領の主張にも、相応の成功可能性があるとされた。
さらに、Burrowsが直ちに占有を回復する権利を有することを前提とする横領及び動産返還請求は、船舶の占有に直接関係するため、海事管轄に属すると判断された。一方、移転書類が仮装であるとの主張は、法的構成が成り立たず、成功の見込みがないとして排斥された。
また、PMYによる説明が誤解を招くものであったとする豪州消費者法上の請求は、新造船購入契約に関する人的請求であり、Merlionの所有権又は占有権そのものを根拠とするものではない。返還を求める救済が財産的性質を有しても、請求の本質は変わらないとして、この部分のみが海事管轄外として取り消された。