英国に拠点を持たないヨット管理会社YMCに雇用され、世界各地を航行するスーパーヨットで勤務していた船員Gordonが、英国の雇用権法及び平等法の保護を受けられるかが争われた事案である。Gordonはアバディーンに居住し、同地から乗船地へ移動して勤務を開始し、休暇時には同地へ戻っていた。給与は英国の銀行口座に支払われ、契約は英国法準拠、英国裁判所の専属管轄とされていた。
雇用審判所は、Gordonを複数国を移動しながら働く「巡回型労働者」と認定し、その場合には実際の勤務場所だけでなく、労働者の勤務上の拠点が英国にあるかが重要であるとした。YMCは、本船が英国へ寄港したことはなく、乗船中の業務も英国外で行われていたため、英国との十分な結び付きはないと主張した。
雇用上訴審判所は、船舶自体は船員の「拠点」ではなく、移動の手段又は勤務場所にすぎないとした。巡回型労働者の拠点とは、勤務期間の開始時に出発し、終了後に戻る場所を意味する。本件では、YMCが航空運賃を負担し、雇用契約上の給与支払も乗船前日から開始されていたため、アバディーンから本船への移動及び帰宅も勤務期間の一部と評価された。
さらに、英国法の選択、英国口座への給与支払及び英国での納税も考慮すると、Gordonの雇用は英国及び英国雇用法と十分に強い関係を有していた。したがって、英国法上の整理解雇手当等を請求できるとして、YMCの上訴は棄却された。