中国寄港前に交代した新乗組員が所定のPCR陰性証明書を所持しておらず、南京で本船の入港・着岸が拒否されたことについて、船主が契約違反責任を負うかが争われた。
仲裁廷は、「in every way fitted for the service」との義務は本船の物理的状態だけでなく、予定された航海を行うために必要な証明書や許可も含むとした。中国当局のPCR証明書要件は既に周知されており、船主は南京が最初の寄港地であることを知りながら、交代船員について必要な証明書を取得していなかったため、本船は契約上要求された状態になかったと判断された。船主は、検疫時間・費用を傭船者負担とする条項を援用したが、本船は検疫を受けたのではなく入港自体を拒否されており、しかも船員交代は本船引渡前に船主が手配したものであったため、同条項は適用されない。また、傭船者が本船を釜山へ戻してPCR検査を受けるよう指示したことも、実際上ほかに選択肢がなく、損害軽減のための措置にすぎないため、責任を傭船者に移すものではなかった。その結果、船主の違反により相当の時間損失が生じたと認定され、傭船者には、用船料相当額、燃料費および釜山での費用を含む請求が認められた。なお、仮に損害賠償ではなくoff-hireとして検討しても、入港拒否は「any other cause preventing the full working of the vessel」に該当するとされた。