危険物貨物の爆発により本船が損傷し、傭船者が船主に約2億米ドルの損害賠償責任を負った事案において、船主自身が被った損失についても傭船者が1976年責任制限条約に基づき責任を制限できるかが争われた。
最高裁は、同条約上、船主と傭船者はいずれも「shipowner」に含まれ、船主が自己の固有損害を傭船者に請求する場合を責任制限から一律に除外する明文はないと判断した。したがって、船主から傭船者への請求であっても、各損害項目が条約2条1項の制限債権に該当するかを個別に検討すべきである。もっとも、本船自体の損傷およびその修繕に伴う費用は、貨物損傷との因果関係ではなく請求の性質に着目すべきであり、同項(a)の制限債権には該当しない。また、当局への支払や消火水除去費用も、将来の損害を防止・軽減するものではなく、既に生じた船舶損害を修復するための費用であるため、同項(f)には該当しない。他方、船上貨物の船外搬出および汚染除去費用は、貨物の「除去」又は「無害化」に当たり、同項(e)に基づき責任制限の対象となり得る。これらの費用が同時に本船修繕にも関係することは、同項(e)の適用を妨げない。その結果、傭船者は船主の固有損害についても一律に責任制限を否定されるものではなく、各請求項目の性質に応じて責任制限の可否が判断されることが確認された。