売主がウクライナ港閉鎖を理由に誤って不可抗力を宣言し契約を履行しなかった場合、買主が実際に契約を履行できる状態であったことを立証せずに、多額の損害賠償を請求できるかが争われた。
買主は当初Finderを船積船として指名したが、その後同船を別の航海に投入していた。仲裁廷は、売主が誤って不可抗力を宣言した以上、買主の履行可能性は問題にならないとして、市場差額による損害賠償を認めた。裁判所は、契約違反による多額の損害を請求するには、原則として、違反がなければ自ら契約を履行できたことを買主が立証しなければならないと判断した。売主の不可抗力宣言が誤っていたことだけでは、この立証義務は免除されない。もっとも、売主がその点を主張できないとの禁反言が成立する場合は別であるが、本件ではその主張も事実認定もなかった。また、契約上、代替船の指名は、当初指名船の予定到着日の少なくとも1営業日前までに行う必要があり、この期限は代替船指名権の前提条件である。買主は期限までに代替船を指名しておらず、その後も履行可能であったとは認定されていなかった。その結果、買主が実質的損害を立証したとする仲裁判断には法律上の誤りがあり、仲裁判断は差し戻されることなく取り消された。