米国制裁により契約所定の米ドル建て運賃の送金が困難となった場合、船主MURが不可抗力条項を援用できるか、また「合理的努力」として用船者RTIが提案したユーロ払いを受け入れる義務があったかが争われた事案である。契約は運賃を米ドルで支払うことを定め、不可抗力事由は、影響を受けた当事者の合理的努力によって克服できない場合に限り認められるとしていた。
仲裁廷及び控訴院多数意見は、RTIが為替費用を負担してユーロで支払えばMURに不利益はなく、制裁の影響を克服できたとして、MURの不可抗力主張を否定した。これに対し最高裁は、合理的努力条項の目的は、契約どおりの履行を維持又は再開することであり、契約と異なる履行を受け入れさせることではないと判断した。
本件で契約上要求された履行は米ドルによる支払であり、問題は合理的努力によって米ドル払いを実現できたかであって、ユーロ払いという代替履行を受け入れれば問題を回避できたかではない。契約自由の原則上、当事者は契約外の履行を拒むことができ、重要な契約上の権利を放棄させるには明確な文言が必要である。また、何が不利益のない代替履行かを事後的に判断させれば、商事契約の確実性を害するとされた。
したがって、MURはユーロ払いを受け入れる義務を負わず、これを拒絶したことは合理的努力の懈怠ではないとして、最高裁は控訴院判決を破棄し、MURの上告を認めた。