ギリシャ・コルフ島のマリーナで発生したBig Kahunaの火災が他船へ延焼し、複数の船舶が沈没した事故について、同船の所有者及び保険者が英国で責任制限手続を開始したところ、被害船Halcyonの所有者が、ギリシャの方が適切な法廷地であるとして英国手続の停止を求めた事案である。英国の責任限度額は約53万ポンドであるのに対し、ギリシャでは約160万ポンドとされていた。
裁判所は、事故原因や損害賠償責任を判断する本案訴訟の自然な法廷地はギリシャであると認めた。事故地、準拠法、証人及び証拠書類の所在地はいずれもギリシャに集中していたためである。しかし、責任制限手続は本案請求とは独立した別個の手続であり、本案訴訟と責任制限手続が異なる国で進行することは海事事件では珍しくないとされた。
また、責任制限が故意又は無謀な行為によって破られる可能性については、事故後18か月を経てもこれを裏付ける証拠がなく、単なる推測にすぎなかった。責任制限を申し立てる法廷地を選択する権利は原則として船主にあり、裁判所はその選択へ容易に介入すべきではないとされた。
英国での限度額がギリシャより低く、船主が法的利益を得るとしても、それだけでフォーラム・ショッピングとはならない。船主には英国で責任制限を求める正当な権利があり、限度額の差は手続停止を命じる理由にならないとして、Halcyon側の申立ては棄却された。