UBS AG v Owner of the Vessel “Chloe V”; Koch Shipping Pte Ltd (intervening) [2025] SGHC 142 – High Court of Singapore (Justice S Mohan) – 28 July 2025

融資銀行が新たな定期傭船契約を承認しつつ、傭船者に対するLetter of Quiet Enjoyment(LQE)の発行を拒否したことが、抵当権者としての裁量権濫用に当たるかが争われた。船主は、融資契約の条項により銀行には傭船契約を承認する裁量があり、その裁量には合理的かつ誠実に行使すべきBraganza義務が伴うため、LQEの拒否は不当であると主張した。

裁判所は、当該条項は、一定の傭船契約を締結する際に銀行の承認を得る義務を定めたものにすぎず、銀行にLQEを発行するか否かの裁量や義務を付与するものではないと判断した。傭船契約の承認と、抵当権行使を制限するLQEの発行は別問題である。さらに、仮にLQE発行について裁量が存在し、Braganza義務が適用されるとしても、銀行の拒否は合理的であった。銀行は、担保不足の見込み、船主の債務不履行歴、傭船料の不足および船主の財務悪化を適切に考慮していた。その結果、銀行はLQEを発行する義務を負わず、その拒否も不合理又は恣意的ではない。船主の反対請求が棄却された。