航海用船契約上の紛争について、用船者China Star Chemical Shippingがシンガポール仲裁の担保を得るため、船舶Lingyangをマレーシアで差押えたところ、訴訟の被告とされたLingyang Shipping Navigationは契約当事者ではないとして、差押えの取消し及び不当差押えによる損害賠償を求めた事案である。
用船契約はChina Starと本船の登録船主Opportunitiesとの間で締結されていた。China Starは、OpportunitiesがLingyang Shippingの代理人として契約したと主張し、Lingyang Shippingを被告として対物訴訟を提起した。しかし裁判所は、両社間の代理関係又はChina StarとLingyang Shippingとの契約関係を認める証拠はなく、請求原因発生時に契約上の責任を負っていたのはOpportunitiesであるとして、対物訴状及び差押えを取り消した。
他方、不当差押えによる損害賠償については否定した。差押えが取り消されたとしても、直ちに損害賠償責任が生じるものではなく、申立人に悪意又は悪意に相当する重大な過失が認められる必要がある。China Starは、本船名と会社名の一致、両社の登録住所及び取締役の共通性、船舶情報データベースの記載、並びに船舶売買の状況などを検討しており、結果的にその多くが誤っていたとしても、全く根拠なく差押えを申し立てたとはいえない。
また、制裁対象となり得るベネズエラ産貨物が関係していたため、P&Iクラブの保証状による支払可能性について追加的な保証を求め、直ちに本船を解放しなかったことも不当ではなかった。したがって、差押え自体は被告の誤りを理由に取り消されたが、悪意又は重大な過失はなく、損害賠償請求は棄却された。