Owner and/or Demise Charterer of the Vessel “A Symphony” v Owner and/or Demise Charterer of the Vessel “Sea Justice” [2023] SGHCR 24

中国・青島沖でA SymphonyとSea Justiceが衝突し、船体・貨物損害及び油濁事故が発生したことから、A Symphony側がシンガポールで対物訴訟を提起し、Sea Justiceを差し押さえた一方、双方が中国でも責任制限基金を設立して衝突責任を争っていた事案である。Sea Justice側は、シンガポール訴訟の停止、差押命令の取消し及び担保返還を求めた。

裁判所は、Spiliadaの二段階テストを適用し、中国が明らかにより適切な法廷地であると判断した。事故は中国領海で発生し、不法行為には中国法が適用されること、中国当局が事故調査を行っており、その証拠や担当者をシンガポールで利用できるか不確実であること、さらに中国とシンガポールの訴訟が大きく重複し、判断の抵触や証拠調べの重複が生じることが重視された。

また、中国の責任制限額がシンガポールより低く、シンガポール担保を失うことは、訴訟停止を拒むべき「正義上の事情」には当たらないとされた。むしろ、シンガポール訴訟を継続すれば、船主が中国で選択した責任制限手続に加えて、事実上シンガポールでも基金設定を強いられる結果となり、責任制限を求める法廷地を選ぶ船主の権利を害するとされた。

したがって、シンガポール訴訟は停止され、差押解除のため提供された担保も返還された。他方、差押申立時に中国手続への参加を開示しなかった点については、A Symphony側が権利を留保して参加していたため重要な不開示とはいえず、差押命令自体の取消しは認められなかった。

(控訴審、上告審あり)