Herculito Maritime Ltd v Gunvor International BV (The Polar) [2024] UKSC 2

ソマリア海賊に拿捕されたPolarの解放のため支払われた身代金について、船主側保険者が貨物関係者に共同海損分担金を請求できるかが争われた事案である。用船契約では、アデン湾航行に必要な追加戦争保険料及び誘拐・身代金保険料を用船者が負担していた。貨物側は、この保険料負担条項により、当事者は損失を保険者に負担させる「保険コード」を設けたのであり、船主側保険者には代位請求権がないと主張した。

最高裁は、契約当事者の一方が保険料を負担したというだけで、当然に相互間の請求や保険者の代位請求を排除する推定は生じないとした。代位免責の有無は、契約全体を解釈し、当事者が損失を保険のみで処理する仕組みに合意したかを個別に判断すべきである。共同被保険者となっている場合とは異なり、単に用船者が追加保険料を支払った場合には、それだけで免責は認められない。

本件で用船者が追加保険料を負担したのは、船主が通常なら拒絶し得る危険海域への航行を可能にするためであり、危険による損失について用船者又は貨物側を免責する趣旨ではなかった。したがって、用船者自身にも代位免責はなく、これを前提として貨物側が船荷証券上の免責を主張することもできないとされた。

また、用船契約中の航路変更等の戦争危険条項は船荷証券に組み込まれ得るが、用船者に追加保険料を負担させる条項を、貨物関係者に読み替えて適用することはできないとされた。以上から、貨物所有者は身代金に関する共同海損分担義務を免れず、船主側保険者による代位請求が認められた。