スエズ運河で座礁したEver Givenの離礁作業について、SMITと船主との間に報酬条件を定めた契約が成立していたか、それとも契約のない救助として1989年海難救助条約に基づく救助報酬を請求できるかが争われた事案である。SMITは人員、機材及び曳船を投入して離礁に貢献したが、船主は、2021年3月26日のメール交換により技術支援契約が成立していたと主張した。
問題となったメールでは、SCOPIC 2020の料率、外部費用への15%加算及び離礁成功報酬35%などが確認され、SMITもこれを「confirmed」と返信していた。他方、双方は同時に、WRECKHIRE 2010を基礎とする正式契約の作成及び残る条項の交渉を予定していた。
控訴院は、契約成立の判断では、客観的にみて当事者が十分な条件に合意し、直ちに法的拘束を受ける意思を有していたかが重要であるとした。本件のメール交換により報酬の基本条件には合意したものの、作業内容、責任分担その他の重要条件はなお交渉中であり、報酬条件だけで先に拘束される意思は示されていなかった。
SMITが当初、曳船手配費用を負担するため早期の契約締結を求めていたことも、結論を左右しなかった。報酬合意後に交渉の緊急性が低下したのは、SMITの支援なしには離礁が困難となり、その交渉上の立場が強まったためとも説明できた。したがって、正式な救助契約は成立しておらず、SMITは契約外の救助者として救助報酬を請求できるとして、船主の控訴は棄却された。