船舶3隻を担保として約1,200万米ドルを融資した銀行Eurobankが、借入人らの返済不履行後、残債の支払を求めた事案である。担保船のうち2隻はジブチで多数の債権者により差し押さえられ、その後、港湾当局による私的売却を経て解撤された。借入人らは、銀行が担保船の処分に関与し、適正な市場価格を得る義務に違反したと主張した。
裁判所は、銀行が行ったのは、既に多数の差押えを受けていた本船を追加的に差し押さえたことだけであり、売却や解撤を主導した事実はないと認定した。船舶抵当権者が単に差押えを行っただけでは、船舶を占有したことにはならず、その段階で負う義務は、債権回収のため善意で差押権を行使することに限られるとされた。
抵当権者が船舶を占有し、又は自ら売却権を行使した場合には、船舶を合理的に管理し、適正な市場価格を得るよう相当の注意を尽くす義務が生じ得る。しかし本件では、銀行は売却主体ではなく、港湾当局による売却について事前に知らされてもいなかったため、そのような義務は発生しなかった。
また、銀行には、自ら船舶を売却する義務、他の債権者の債権を弁済して別の法域へ船舶を移す義務、港湾当局の売却を阻止する義務、又は売却代金を回収する義務もないとされた。したがって、借入人らの抗弁には現実的な成功可能性がなく、Eurobankに残債及び利息について略式判決が認められた。