Owner and/or Demise Charterer of the Vessel “A Symphony” v Owner and/or Demise Charterer of the Vessel “Sea Justice” [2024] SGHC 37

中国・青島沖でA SymphonyとSea Justiceが衝突し、船体・貨物損害及び油濁事故が発生したことから、A Symphony側がシンガポールでSea Justiceを差し押さえた一方、双方が中国でも責任制限基金を設立し、衝突責任を争っていた事案である。Sea Justice側は、シンガポール訴訟の停止、差押命令の取消し及び担保返還を求めた。

裁判所は、事故地が中国領海であり、中国法が適用されること、中国当局が事故調査を行っていること、両国の訴訟内容が大きく重複することから、中国が明らかにより適切な法廷地であるとして、シンガポール訴訟を停止した。A Symphony側は、中国で得られる責任制限額がシンガポールより低いため、シンガポール担保を中国判決の支払に充てるべきと主張した。

しかし、シンガポール法には、外国での訴訟のために差押担保を維持する制度がないとされた。また、中国での回収不足分についてだけシンガポール訴訟を残すことも、中国よりシンガポールの責任制限制度が優れていることを前提とするため認められなかった。中国が適切な法廷地であるとの判断と担保維持も整合しないとされた。

さらに、責任制限を求める法廷地を選ぶ権利は船主にあり、シンガポール担保を維持すれば、Sea Justice側に事実上二つ目の責任制限基金を設けさせることになる。したがって担保は返還された。他方、差押申立時に中国手続への参加を十分開示しなかったとの主張については、対物管轄に関する重要事項ではないとして、差押命令自体の取消しは認められなかった。

(上告審あり)