King Crude Carriers SA v Ridgebury November LLC [2025] UKSC 39

船舶売買契約上、買主がエスクロー口座開設に必要な書類を提出しなかったため10%の預託金が支払われなかった場合、売主がその預託金を「債務」として請求できるか、それとも損害賠償しか請求できないかが争われた。 売主は、買主自身の契約違反によって預託金支払の前提条件が成就しなかった以上、その条件は成就したものとみなされるべきであり、預託金を債務として請求できると主張した。しかし最高裁は、条件成就を妨害した   続きを読む…

Allseeds Switzerland SA v Intergrain SA [2025] EWHC 2788 (Comm)

CIF売買において売主が手配した貨物保険について保険者が保険金請求を拒絶した場合、それだけで売主の有効な保険を付保すべき義務への違反が成立するかが争われた。貨物は揚地到着時に損傷しており、売主は航海前に保険証券を取得していなかった。その後発行された保険証券についても、保険者は既発生の損傷が告知されていなかったとして、保険を無効として保険金支払を拒絶した。 仲裁判断は、保険者が補償を拒絶したことなど   続きを読む…

Songa Product and Chemical Tankers III AS v Kairos Shipping II LLC [2025] EWCA Civ 1227

船主側保証人の倒産事由により裸傭船契約が途中解約された後、傭船者が本船をどこまで回航して船主に返還すべきかが争われた。船主は、契約条項上、本船の現在地又は次港だけでなく、船主にとって「便利な港又は場所」で再占有できるとして、米国西岸からクロアチアまで回航するよう求めた。傭船者は、船主は解約時の寄港地で速やかに本船を引き取るべきであると主張した。 控訴院は、契約終了後は本船が傭船者の営業上の支配を離   続きを読む…

Orion Shipping and Trading LLC v Great Asia Maritime Ltd(The Lila Lisbon)[2025] EWCA Civ 1210

売主がCancelling Dateまでに本船を引き渡せず、買主がSaleform 2012第14条に基づいて契約を解除した場合、売主の違反がrepudiatory breachに達していなくても、市場価格上昇分のloss of bargain damagesを請求できるかが争われた。 控訴院は、売主にはCancelling Dateまでに本船を引渡可能な状態にするため、相当な注意を尽くす黙示義務   続きを読む…

Ceto Shipping Corporation v Savory Shipping Inc(The Victor 1)[2025] EWHC 2033 (Comm)

裸傭船期間の満了時に、傭船者が本船の所有権を取得するための契約条件を満たしていたかであった。所有権移転には、傭船料、管理費その他の未払金がすべて支払われていることが必要とされていた。傭船者は、管理会社の保険手配上の違反や、イラン産ガソリンを輸送する航海の不実施を理由として管理契約を解除したため、管理費等の支払義務は残っていないと主張した。 裁判所は、保険手配上の違反は認めたものの、傭船者の解除は契   続きを読む…

Virgin Media Wholesale Ltd v Owners of the Lida Suzanna [2025] IEHC 493

ホタテ漁船の浚渫具が海底通信ケーブルを損傷したとして、漁船側に過失責任が認められるかが争われた。 裁判所は、船舶の航跡、通信障害の発生時刻、海底で何かに引っ掛かった状況および損傷形態から、Lida Suzannaの浚渫具が露出していたケーブルを損傷したと認定した。漁船側は、漁業は適法な活動であり、ケーブル所有者が十分な深さに埋設すべきであったと主張した。しかし、漁業と海底ケーブルの設置はいずれも適   続きを読む…

Bank of America NA, Singapore Branch v Owners of the Ocean Goby and Ocean Jack [2025] SGHC 183

船舶売却代金に対する代位権を主張するDa Huiが、先行する対人訴訟が手続上不適切として棄却されたため、改めて売却代金を対象とする対物訴訟を提起し、その決着まで既存債権者であるPetroChinaおよびSocGenへの払渡しを停止するよう求めた。 裁判所は、新たな対物訴訟と既存の払渡し手続との間に、停止を必要とする実質的な争点の重複はないと判断した。控訴院もDa Huiに対物訴訟を追行するよう指示   続きを読む…

Winson Oil Trading Pte Ltd v United Overseas Bank Ltd/The Maersk Katalin [2025] SGCA 42

船主が船荷証券の提示を受けずに貨物を引き渡した後、後日その船荷証券を取得した融資銀行が、船主に誤渡し責任を追及できるかが争われた。 船主は、銀行が貨物引渡後に船荷証券を取得したにすぎず、実際には船荷証券や貨物を担保として重視していなかったため、訴権を取得していないと主張した。控訴院は、船荷証券が有効に裏書・交付され、銀行が善意の所持人となった以上、COGSA 1992に基づく契約上の権利は銀行に移   続きを読む…

Tonzip Maritime Ltd v 2Rivers Pte Ltd(The Catalan Sea)[2025] EWHC 2036 (Comm)

制裁対象者MGが荷送人Neftisaを実質的に支配している可能性を理由に、船主が貨物の積載を拒否できるかが争われた。 裁判所は、制裁条項に基づく積載拒否には、実際の制裁違反が確定している必要はないものの、船主が、当時入手可能な資料に基づき、制裁にさらされる現実的なリスクがあると誠実かつ客観的に合理的に判断している必要があるとした。本件では、MGとNeftisaとの関係を示す資料はあったものの、MG   続きを読む…

UBS AG v Owner of the Vessel “Chloe V”; Koch Shipping Pte Ltd (intervening) [2025] SGHC 142 – High Court of Singapore (Justice S Mohan) – 28 July 2025

融資銀行が新たな定期傭船契約を承認しつつ、傭船者に対するLetter of Quiet Enjoyment(LQE)の発行を拒否したことが、抵当権者としての裁量権濫用に当たるかが争われた。船主は、融資契約の条項により銀行には傭船契約を承認する裁量があり、その裁量には合理的かつ誠実に行使すべきBraganza義務が伴うため、LQEの拒否は不当であると主張した。 裁判所は、当該条項は、一定の傭船契約を   続きを読む…

Sino East Transportation Ltd v Grand Amazon Shipping Ltd [2025] EWHC 1990 (Comm)

内在的欠陥のある大豆貨物について中国裁判所が船主に誤って損害賠償責任を認めた場合、船主が定期傭船者に黙示の補償を請求できるかが争われた。船主は、中国での貨物損害訴訟により一定額の賠償金と費用を支払い、その全額について、傭船者の積荷・航海指図から生じた損失であるとして補償を求めた。 裁判所は、傭船者の指図に従った結果、第三者に対する予想外の責任を負った場合、船主がその損失を負担することを契約上引き受   続きを読む…

Batavia Eximp & Contracting (S) Pte Ltd v Pedregal Maritime SA(The Taikoo Brilliance)[2025] EWHC 1878 (Comm)

貨物誤渡し請求について、船舶差押えによる担保取得がHague-Visby Rules上の「訴えの提起」に当たるか、また甲板積み貨物にも1年の出訴期限が適用されるかが争われた。 貨物受取人は、ロンドン仲裁を開始する前にシンガポールで姉妹船を差し押さえ、担保を取得していた。しかし裁判所は、この手続は請求の実体を判断するものではなく、担保確保のみを目的としていたため、「suit」とはいえないと判断した。   続きを読む…

Trans Trade RK SA v State Food and Grain Corporation of Ukraine [2025] EWHC 1803 (Comm)

FOB売買において、契約では、買主は所定日に船荷証券等の船積書類と引換えに代金を支払うものとされ、代金完済まで所有権は売主に留保されていた。買主が代金を支払わなかったため、売主はGAFTA仲裁で代金請求を行った。売主が船荷証券を保持し、所有権が買主に移転していない場合でも、Sale of Goods Act 1979第49条2項に基づき、売主は代金全額を請求できるかが争われた。 仲裁廷はこれを認め   続きを読む…

Ocean Clap Shipping Ltd v Global Offshore Services BV [2025] EWHC 1591 (Comm)

裸傭船者の支払停止後、当事者間の行為により、裸傭船契約と保証契約を終了させ、債務を清算する包括的合意が成立したか、また保証請求を保証期間内に提起する必要があるかが争われた。傭船者は、2016年以降、船主が実質的に本船を取り戻し、自らは技術・商業管理のみを行う新たな合意が成立し、既存債務もゼロにされたと主張した。 裁判所は、行為による契約成立には、既存契約上の権利義務では説明できない明確な行動が必要   続きを読む…

V and Another v K [2025] EWHC 1523 (Comm)

売船契約をめぐるLMAA仲裁において、売主選任仲裁人が売主代理人法律事務所から過去に複数回選任されていたことを十分に開示しなかったとして、見かけ上の偏見および重大な手続的不公正があるかが争われた。 裁判所は、偏見の判断基準は、公正かつ事情を知る観察者が、仲裁人に偏りがある現実的可能性を認めるかどうかであるとした。ただし、ロンドン海事仲裁では、限られた専門仲裁人と法律事務所の間で、無関係な案件につい   続きを読む…

Berge Bulk Shipping Pte Ltd v Taumata Plantations Ltd and Others [2025] EWCA Civ 876

船荷証券なしで貨物を引き渡した際にShipping社が発行したLOIについて、背後の木材輸出会社らを非開示本人として拘束できるかが争われた。 控訴院は、契約名義人が本人として契約しているように見える場合、別の者を非開示本人とするには、代理人と本人の双方が当該契約について代理関係を意図し、かつ代理人が実際の権限内で行動していたことが必要であるとした。本件では、Shipping社は傭船リスクをFore   続きを読む…

Da Hui Shipping (Pte) Ltd v An Rong Shipping Pte Ltd [2025] SGCA 30

共同借入人の一方が銀行債務を自己の負担割合を超えて返済した場合、他方の共同借入人に対する求償権に加え、既に実行・消滅した船舶抵当権に代位して船舶売却代金から優先弁済を受けられるかが争われた。 裁判所は、共同債務者が自己の公平な負担割合を超えて返済した場合、他の共同債務者に対する求償権を有すること自体は認めた。しかし、本件では、銀行の抵当権は既に船舶の差押え・裁判上の売却によって実行され、売却代金に   続きを読む…

Natixis, Singapore Branch v Rajagopalan and Others [2025] SGCA 29

シンガポールで対物訴訟を提起していた銀行らが、船舶をジブラルタルで差し押さえ・競売した司法管理人らに対し、自己の権利を不当に消滅させたとして責任追及できるかが争われた。 控訴院は、対物訴状の発行により生じるstatutory lienは、直ちに船舶上の完全な担保権となるものではなく、差押えによって担保を取得するための先行的権利にすぎないとした。実際に船舶上の担保的地位を得るのは、原則として差押えが   続きを読む…

Mediterranean Shipping Co SA and Others v Interglobal Technologies Ltd and Others [2025] EWHC 1464 (Comm)

英国裁判所の専属管轄条項を含む船荷証券に基づく紛争について、荷受人がナイジェリアで提訴・船舶差押えを行ったことから、anti-suit injunctionおよびanti-anti-suit injunctionを認めるべきかが争われた。 裁判所は、船荷証券はMSCのウェブサイト上の標準約款を有効に取り込み、そこに英国法および英国高等法院の専属管轄条項が含まれていたと判断した。また、Intergl   続きを読む…

Mitsui OSK Lines Ltd and Another v The Ship “Yangze 22” [2025] FCA 563

衝突事故により豪州で差し押さえられたYangze 22について、P&I Clubが差し入れたLOUが本船解放に必要な十分かつ適切な担保に当たるかが争われた。 船主側のLOUは、いずれかの国で責任制限基金が設立され、請求がその基金に対して行われるべきと判断又は合意された場合、LOUに基づく請求権が自動的に消滅すると定めていた。裁判所は、船舶解放のための担保は、原告の合理的に主張し得る最大請求   続きを読む…

Oversea-Chinese Banking Corporation Ltd v Argoglobal Underwriting Asia Pacific Pte Ltd and Others [2025] SGHC 82

曳航中に転覆したTeras Lyzaについて、抵当権者OCBCが船体保険に基づき全損保険金を請求できるかが争われた。 裁判所は、船体の回収・保全費用と修理費用が保険価額を超えることから、constructive total lossが成立すると判断した。また、転覆は予期しない海水流入によるもので、通常の老朽化や船体の固有の欠陥ではなく、perils of the seasによる損害とされた。保険者   続きを読む…

Monford Management Ltd, Owners of The Kiveli v Afina Navigation Ltd, Owners of The Afina I [2025] EWHC 1185 (Admlty)

夜間に反航する2隻が衝突した事故について、Collision Regulations上のhead-on situation又はcrossing situationのいずれに当たり、各船の過失をどのように配分すべきかが争われた。 裁判所は、両船はほぼ反対方向に進み衝突のおそれがあったため、Rule 14のhead-on situationに該当し、双方が早期かつ明確に右転すべきであったと判断した。R   続きを読む…

Tasmanian Ports Corporation Pty Ltd v CSL Australia Pty Ltd(The Goliath)[2025] FCAFC 53

Goliathが港内でタグ2隻および岸壁に衝突し、沈没したタグの撤去費用等について、船主が1976年責任制限条約に基づき責任を制限できるかが争われた。 オーストラリアは、同条約2条1項(d)の沈没船の引揚げ・撤去・無害化に関する請求を国内法化していなかった。船主は、撤去費用は同時に同項(a)の財物損害に伴う結果損害にも当たるため、なお責任制限の対象になると主張した。第一審はこの主張を認めたが、連邦   続きを読む…

MSC Mediterranean Shipping Co SA v Conti 11 Container Schiffahrts-GmbH & Co KG MS(The MSC Flaminia)[2025] UKSC 14

危険物貨物の爆発により本船が損傷し、傭船者が船主に約2億米ドルの損害賠償責任を負った事案において、船主自身が被った損失についても傭船者が1976年責任制限条約に基づき責任を制限できるかが争われた。 最高裁は、同条約上、船主と傭船者はいずれも「shipowner」に含まれ、船主が自己の固有損害を傭船者に請求する場合を責任制限から一律に除外する明文はないと判断した。したがって、船主から傭船者への請求で   続きを読む…

SD Rebel BV and Another v Elise Tankschiffahrt KG [2025] EWHC 376 (Admlty)

座礁した内航タンカーStelaをタグVB Rebelが約45分で離礁させた作業が海難救助に当たるか、その報酬額およびオランダ訴訟を差し止めるべきかが争われた。 裁判所は、潮位低下に伴い本船が回頭して船体外板を損傷する現実的危険があり、自力離礁も困難であったため、合理的な船長であれば有償の救助を拒まない状況にあったと判断した。船長がSafe Delivery Certificateに署名したことも救   続きを読む…

Owners of the X-Press Mahanada v Owners of the Burgan [2025] EWHC 721 (Admlty)

2019年6月14日、バングラデシュ・チャットグラム港への航路上にある狭水道の屈曲部で、入航中のコンテナ船X-Press Mahanada(XPM)と出航中のプロダクトタンカーBurganがほぼ正面衝突した事故について、各船の過失割合が争われた事案である。Burganは水路中央線より左側の反対側水域を航行しており、直前にはバングラデシュ陸軍の水陸両用艦Shakti Sanchar(SS)が両船間を   続きを読む…

Marina Developments Ltd v Owners of SY Explorer [2024] EWHC 3531 (Admlty)

2023年Ocean Globe Raceに参加した14隻の帆船について、マリーナ運営会社MDLが相当額の係留料を請求し、そのうち1隻であるSY Explorerを全額の担保として差し押さえた事案である。被告は、係留はスポンサー契約の一環として無償であった、又は契約当事者は自身ではなく豪州法人Ocean Frontiers Pty Ltdであったと主張した。 裁判所は、被告自身が「無料係留の提供は   続きを読む…

Bunge SA v Pan Ocean Co Ltd (The “Sagar Ratan”) [2025] EWHC 193 (Admlty)

定期用船中の本船が中国・営口港で乗組員4名の新型コロナ感染により入港を拒否され、韓国・蔚山へ航行して乗組員を交代したため生じた遅延期間について、オフハイヤーとなるかが争われた事案である。用船者は2022年3月31日から4月14日までの傭船料等を控除し、仲裁廷は用船者の主張を認めたため、船主が法律問題として上訴した。 裁判所は、BIMCO感染症条項にいう「Affected Area」とは、疾病を理由   続きを読む…

Tanga Pharmaceuticals Plastics Ltd and Others v Emirates Shipping Line FZE [2025] EWHC 368 (Comm)

機関故障後に救助及び共同海損が発生した貨物について、荷主らが運送人に救助料等の補償を求めたところ、船荷証券上の請求期限により時効消滅したかが争われた事案である。船荷証券のClause Paramountは、ヘーグ・ルールを契約上取り込み、同ルール第3条6項は貨物引渡しから1年の出訴期限を定めていた。他方、Clause 18は一定の請求を20日以内に書面通知すべきこと、また訴訟は請求書が実際に送達さ   続きを読む…

Jonathan John Shipping Ltd v Continental Shipping Line Pte [2025] SGHC 34

定期用船契約の不当解除を理由として損害賠償を求めるロンドン仲裁に関連し、船主がシンガポールの用船者に対して全世界的資産凍結命令を申し立てた事案である。用船者は、予定された入渠工事が長期化したことを理由に契約を解除したが、船主は解除に正当な根拠がないと主張した。 裁判所は、LMAA仲裁廷には暫定的な差止命令を発する権限がないため、シンガポール裁判所が保全処分を命じることができるとした。その上で、入渠   続きを読む…