Mare Nova Incorporated v Zhangjiagang Jiushun Ship Engineering Co Ltd [2025] EWHC 223 (Comm)

中国の造船所で修繕を受けた船舶Mare Novaについて、出渠後まもなく中間軸受の損傷が判明したことから、修繕業者の契約責任と仲裁判断の適否が争われた事案である。仲裁人は、造船所が修繕品質、軸芯調整及び機器再組立てに関する契約条項に違反したと認定した一方、船主が海上試運転を求めず、修繕完了を承認したことから、造船所の責任はその時点で消滅し、6か月保証条項に基づく一部損害のみを認めた。 船主は、責任   続きを読む…

Port of Sheerness Ltd v Swire Shipping Pte Ltd [2025] EWHC 7 (Admlty)

MV Kiatingの貨物揚荷が積付不良等により長期化したことから、シアネス港が通常の荷役費用に加え、追加係岸料(period toll)を請求できるかが争われた事案である。本船は、本来約3日半で揚荷を終える予定であったが、航海中の荒天による木材の荷崩れや、吊索の不備により作業が遅延した。港は、標準的な期間を超えて本船が岸壁を使用したとして、10日分の追加料金を請求した。 裁判所は、港湾条件5.4   続きを読む…

Reseau de Transport d’Électricité v Costain Ltd [2025] EWHC 73 (Admlty)

英仏間の海底高圧電力ケーブルが、艀Stema Barge IIと貨物船Saga Skyの衝突後に両船の錨によって損傷した事故について、Stema UKが1976年海事債権責任制限条約1条4項に基づく責任制限を改めて主張できるかが争われた事案である。 従前の責任制限訴訟では、第一審がStema UKを同条1条2項の「operator」と認定したが、控訴院はこれを覆し、同社は同条に基づき責任を制限でき   続きを読む…

Winch Design Ltd v Le Souef; Somnio Superyachts Pty Ltd (Third Party) [2025] EWHC 120 (Comm)

スーパーヨットの設計業務契約に基づく未払報酬について、契約当事者の特定、設計業務の履行前に支払義務が発生するか、及び支払猶予の口頭合意が成立したかが争われた事案である。 裁判所は、契約書上「Client」として明示されていたLe Souef個人が契約当事者であり、プロジェクト会社Somnioではないと判断した。契約文言は明確であり、背景事情によってこれをSomnioとの契約に読み替えることはできな   続きを読む…

Sea Consortium Pte Ltd and Others v Bengal Tiger Line Pte Ltd and Others [2024] EWHC 3174 (Admlty)

コンテナ船X-Press Pearlの火災・沈没事故に関連し、同船の積載スペースを利用して貨物を運送していたBengal Tiger、MSC及びMaerskが、1976年海事債権責任制限条約1条2項の「charterer」に該当し、責任制限を援用できるかが争われた事案である。同条は、船舶所有者のほか、用船者、管理者及び運航者を「shipowner」として責任制限の対象としている。 裁判所は、先例で   続きを読む…

Lord Marine Co SA v Vimeksim Srb DOO (The Lord Hassan) [2024] EWHC 3305 (Comm)

航海用船契約に基づく運賃が未払となったため、船主が貨物であるウクライナ産トウモロコシ約1万1,000トンに留置権を行使し、仲裁法44条に基づいて裁判所に貨物売却命令を求めた事案である。船荷証券には「Freight Prepaid」と記載されていたが、実際には運賃は支払われず、船主は船荷証券を交付しないまま貨物をトルコの倉庫に保管していた。 裁判所は、貨物が発熱し、虫害及びカビが発生して急速に劣化し   続きを読む…

COSCO Shipping Specialized Carriers Ltd v PT OKI Pulp & Paper Mills and Others [2024] SGCA 50

貨物船Le Liがインドネシアの港湾施設を離岸後、桟橋へ通じる橋梁に接触して損傷させた事故について、荷送人兼施設運営者であるOKIがインドネシアで提起した不法行為訴訟を、船荷証券に取り込まれたシンガポール仲裁条項に反するとして差し止められるかが争われた事案である。第一審は、橋梁損傷請求は船荷証券とは独立した純粋な不法行為請求であり、仲裁条項の対象外として差止めを拒否した。 控訴院はこれを覆し、外国   続きを読む…

Hapag-Lloyd AG v Skyros Maritime Corporation and Another [2024] EWHC 3139 (Comm)

定期用船契約上の最終返船期限を、それぞれ約2日及び約7日超過して本船が返還されたことについて、船主が市場傭船料と契約傭船料との差額を損害として請求できるかが争われた事案である。返船時の市場料率は契約料率を大きく上回っていたが、両船は既に第三者へ売却されており、期限どおり返還されても再用船されず、買主へ直ちに引き渡される予定であった。 仲裁廷は、船主が市場価格相当額を不当利得、使用利益損害又は交渉損   続きを読む…

FIMBank plc v KCH Shipping Co Ltd [2024] UKSC 38

ばら積み石炭が船荷証券の呈示なしに荷揚げ後の保管場所から引き渡されたとして、船荷証券を担保として保有していた銀行が運送人に誤渡し責任を追及したところ、ヘーグ・ヴィスビー・ルール第3条6項の1年間の出訴期限が、荷揚げ完了後の誤渡しにも適用されるかが争われた事案である。銀行が仲裁を開始したのは貨物引渡しから1年以上経過した後であった。 最高裁は、同条の期間制限は荷揚げまでの事故に限定されず、荷揚げ後、   続きを読む…

AMS Ameropa Marketing and Sales AG and Another v Ocean Unity Navigation Inc (The Doric Valour) [2024] EWCA Civ 1312

運送人の過失により大豆貨物の一部が損傷し、買主が損傷貨物を拒絶した後、売主が買主に発行したクレジットノートを、運送人に対する損害賠償額から控除すべきかが争われた事案である。買主Oilexは船荷証券の適法な所持人であり、その後、運送人に対する請求権を売主に譲渡していた。 控訴院は、貨物損害に関する通常の損害額は、到着時における健全貨物の価値と損傷貨物の実価との差額により算定されるとした。その上で、買   続きを読む…

O v C [2024] EWHC 2838 (Comm)

用船者が米国OFACの制裁対象者リストに掲載された後、船主がナフサ貨物の引渡しを拒否し、仲裁法44条に基づいて貨物の売却及び売却代金の保管方法を求めた事案である。用船者は売却自体には反対しなかったが、代金は通常どおり裁判所へ払い込むべきと主張し、船主は米国制裁違反の危険を理由にOFACの許可を得た凍結口座への入金を求めた。 裁判所は、貨物を船上に留置し続ければ、船主は本船を他の用途に使用できず、タ   続きを読む…

United Overseas Bank Ltd v Owner and/or Demise Charterer of the Vessel “Maersk Katalin” [2024] SGHC 282

船主が原本船荷証券の呈示を受けずに軽油貨物を荷受人側へ引き渡したことについて、その後に船荷証券を取得した融資銀行UOBが誤渡し責任を追及した事案である。船主は、用船契約上、補償状(LOI)と引換えに船荷証券なしで荷揚げする義務があったこと、UOBがこれに同意又は追認したこと、UOBに訴権がないこと、及び誤渡しと損失との因果関係がないことを主張した。 裁判所は、LOIと引換えに貨物を引き渡すとの用船   続きを読む…

Stournaras Stylianos Monoprosopi EPE v Maersk A/S [2024] EWHC 2494 (Comm)

銅線を購入した荷受人が、実際にはコンクリートブロックが詰められていたコンテナについて、運送人Maerskが申告重量と実測重量の大幅な相違を把握しながら無故障船荷証券を発行したとして損害賠償を求めた事案である。船荷証券には荷送人申告の重量が記載されていたが、「weight unknown」との文言も付されていた。 裁判所は、ヘーグ・ルール第3条3項(c)の「貨物の外観上の状態」は、合理的な外観検査で   続きを読む…

Dan-Bunkering (Singapore) Pte Ltd v The Ship “Yangtze Fortune” [2024] FCA 1149

船舶Yangtze Fortuneの司法売却代金について、燃料供給者、貨物関係者及び船主がそれぞれ債権を届け出たところ、船主自身が裸用船者に対する未払傭船料債権に基づき、自船の売却代金へ請求できるか、また各債権の優先順位が争われた事案である。 裁判所は、船主と裸用船者との契約が実質的に売買・融資取引の性格を有していたとしても、船舶の占有・運航支配を裸用船者へ移転する通常の裸用船契約であり、未払傭船   続きを読む…

CSL Australia Pty Ltd v Tasmanian Ports Corporation Pty Ltd (The Goliath) [2024] FCA 824

セメント運搬船Goliathがタスマニア州デボンポート港でタグボート2隻及び岸壁に衝突し、タグボートの沈没、油濁、岸壁損傷及び事業中断損害が発生したことから、船主CSLが1976年海事債権責任制限条約に基づく責任制限を主張できるかが争われた事案である。特に、沈没したタグボート及び流出油の撤去費用が責任制限の対象となるか、また港湾事業者TasPortsの標準約款によって責任制限権が排除されているかが   続きを読む…

Euronav Shipping NV v Black Swan Petroleum DMCC [2024] EWHC 896 (Comm)

タンカーOceaniaに保管された原油が米国制裁対象貨物であるとして、船主Euronavが米国司法省へ引渡したことから、貨物権利者Black Swanがマレーシアで損害賠償請求を提起し、ロンドン仲裁の差止めを求めた。これに対し、Euronavがその差止手続をさらに禁止する命令を英国裁判所に求めた事案である。 裁判所は、EuronavとSilk Straitsとの契約に付されたAddendum 2が   続きを読む…

Orion Shipping and Trading Ltd v Great Asia Maritime Ltd (The MV Lila Lisbon) [2024] EWHC 2075 (Comm)

Norwegian Saleform 2012に基づく船舶売買契約において、売主がキャンセリング・デートまでに有効なNotice of Readinessを提出できず、買主が契約を解除した場合に、買主が契約利益喪失による損害まで請求できるかが争われた事案である。仲裁廷は、売主の遅延には過失があり、買主による解除はClause 14に基づき有効であるとして、市場価格と契約価格との差額を含む損害を認め   続きを読む…

Owner and/or Demise Charterer of the Vessel “A Symphony” v Owner and/or Demise Charterer of the Vessel “Sea Justice” [2024] SGCA 32

中国・青島沖でA SymphonyとSea Justiceが衝突し、船体・貨物損害及び重大な油濁事故が発生した。シンガポールでの対物訴訟を停止する際、Sea Justiceの船舶差押えに代えて提供された担保を維持すべきかが争われた事案である。両当事者は中国でも責任制限基金を設立し、衝突責任に関する訴訟を提起していた。 下級審は、事故地、準拠法、証拠及び関連訴訟の重複を考慮し、中国が明らかにより適切   続きを読む…

MS Amlin Marine NV v King Trader Ltd and Others [2024] EWHC 1813 (Comm)

用船者BMCが船舶Solomon Traderの座礁事故により船主らに多額の損害賠償責任を負った後に倒産したため、船主らが2010年第三者(保険者に対する権利)法に基づき、BMCの責任保険者へ直接請求した事案である。保険契約には、被保険者が第三者に対する責任を先に支払うことを保険金請求の前提条件とする「pay to be paid」条項が含まれていた。 裁判所は、同条項は倒産した被保険者から権利を   続きを読む…

Meck Petroleum DMCC v Owner and/or Demise Charterer of the Vessel Victor 1 and Another [2024] SGHC 165

裸用船中の船舶Victor 1が乗組員の申立てにより差押えられ、司法売却された後、燃料供給者Meckが未払燃料代について売却代金に対する対物訴訟を提起した事案である。問題は、訴訟提起時にCetoがなお裸用船者又は実質的船主であり、人的責任を負う被告として、手続に参加できるかであった。 裁判所は、司法売却の完了により裸用船契約は終了したと判断した。司法売却は、買主に先取特権、担保その他の負担のない完   続きを読む…

MOK Petro Energy FZC v Argo (No 604) Ltd and Others [2024] EWHC 1935 (Comm)

ガソリン貨物がイエメン到着後に規格外として受入れを拒否されたことから、被保険者MOKが貨物保険に基づき損害填補を求めた事案である。MOKは、航海中に船舶タンク又は配管内の水分が混入し、メタノールを含むガソリンが相分離して損傷したと主張した。これに対し再保険者らは、貨物は積込前から規格外であり、保険事故による損傷はなかったと争った。 裁判所は、貨物が偶然な事故により損傷したことを立証する責任はMOK   続きを読む…

SFL Ace 2 Co Inc v DCW Management Ltd (formerly Allseas Global Management Ltd) [2024] EWHC 1877 (Comm)

コンテナ船Green Aceの定期用船契約について、用船者Allseasが契約履行を拒絶したため、船主が親会社AGMLに対し、電子メールで合意された保証に基づき損害賠償を請求した事案である。契約書及び保証書は正式には署名されていなかったが、仲介業者を通じた交渉では、船主が親会社保証を要求し、最終リキャップにより全条件が解除され「clean fixed」と確認されていた。 裁判所は、メールの客観的解   続きを読む…

London Steam-Ship Owners’ Mutual Insurance Association Ltd v Trico Maritime (Pvt) Ltd and Others [2024] EWHC 884 (Comm)

コンテナ船X-Press Pearlの沈没事故について、貨物関係者らがスリランカで船主及びP&Iクラブに対する直接請求を提起したため、クラブが英国裁判所に対し、スリランカ訴訟の差止め及び「pay to be paid」条項の効力確認を求めた事案である。クラブ規則は英国法を準拠法とし、紛争をロンドン仲裁に付すとともに、被保険者が先に第三者へ支払うことを保険金請求の前提としていた。 裁判所は、   続きを読む…

King Crude Carriers SA and Others v Ridgebury November LLC and Others [2024] EWCA Civ 719

Norwegian Saleform 2012に基づく3隻の船舶売買契約において、買主がエスクロー口座開設に必要な書類の提出又は契約書への署名を怠り、売買代金の10%に当たるデポジットを支払わなかったため、売主が損害賠償ではなく債務として請求できるかが争われた事案である。デポジット支払義務は、エスクロー口座の開設を前提としていたが、その前提条件が満たされなかった原因は買主自身の契約違反にあった。   続きを読む…

China Star Chemical Shipping Ltd v Lingyang Shipping Navigation Ltd (The Lingyang) [2024] MLJU 359

航海用船契約上の紛争について、用船者China Star Chemical Shippingがシンガポール仲裁の担保を得るため、船舶Lingyangをマレーシアで差押えたところ、訴訟の被告とされたLingyang Shipping Navigationは契約当事者ではないとして、差押えの取消し及び不当差押えによる損害賠償を求めた事案である。 用船契約はChina Starと本船の登録船主Oppor   続きを読む…

Zurich Insurance Co Ltd and Others v Halcyon Yacht Charter LLP and Others (The Big Kahuna) [2024] EWHC 937 (Admlty)

ギリシャ・コルフ島のマリーナで発生したBig Kahunaの火災が他船へ延焼し、複数の船舶が沈没した事故について、同船の所有者及び保険者が英国で責任制限手続を開始したところ、被害船Halcyonの所有者が、ギリシャの方が適切な法廷地であるとして英国手続の停止を求めた事案である。英国の責任限度額は約53万ポンドであるのに対し、ギリシャでは約160万ポンドとされていた。 裁判所は、事故原因や損害賠償責   続きを読む…

Da Hui Shipping (Pte) Ltd v An Rong Shipping Pte Ltd [2024] SGHC 166

Da Hui Shipping(DH)とAn Rong Shipping(AR)が共同借入人として銀行から借り入れ、各社所有船3隻に抵当権を設定した後、債務不履行により全船が売却され、DHが自己の負担割合を超えて返済したとして、清算中のARに対する分担請求及び銀行の抵当権への代位を求めた事案である。 裁判所は、共同債務者の一方が自己の公平な負担割合を超えて債務を弁済した場合、他の共同債務者に超過分   続きを読む…

The MV Hua Sheng Hai and The MV Kirrixki; Rochelaise de Peche SA v Owners and All Persons Claiming an Interest in the MV Hua Sheng Hai [2024] IEHC 182

アイルランド南西沖の公海上で、大型ばら積船Hua Sheng Haiとフランス籍漁船Kirrixkiが衝突した事故について、双方の過失割合が争われた事案である。両船は互いに、見張り、レーダー利用、灯火、針路・速力の保持及び避航措置に関する国際海上衝突予防規則違反を主張した。準拠法はアイルランド法とされ、同規則上の慎重な船員としての基準に照らして責任が判断された。 裁判所は、Kirrixkiに重大な   続きを読む…

SY Roro 1 Pte Ltd and Another v Onorato Armatori Srl and Others [2024] EWHC 611 (Comm)

2隻のROROフェリーについて、船主とグループ会社間で締結された連続する裸用船契約のうち、船主とのヘッド・チャーターが支配権変更を理由に終了した場合、サブ・チャーター及びサブ・サブ・チャーターも当然に終了するか、また各用船者が没収救済を受けられるかが争われた事案である。 裁判所は、ヘッド・チャーターの終了が常に下位の用船契約を当然終了させるとの一般原則は採用せず、契約全体の構造と当事者の合意内容に   続きを読む…

RTI Ltd v MUR Shipping BV [2024] UKSC 18

米国制裁の影響により契約所定の米ドル送金が遅れる可能性が生じた場合、船主が不可抗力条項を援用するために、傭船者から提案されたユーロ払いを受け入れる必要があるかが争われた。 傭船者は、ユーロで支払い、為替差損や追加費用も負担すると提案したため、船主は合理的努力により不可抗力の影響を回避できたと主張した。最高裁は、不可抗力条項における「合理的努力」は、契約どおりの履行を可能にするための努力を意味し、明   続きを読む…