Great Lakes Reinsurance (UK) plc v RAV Bahamas Ltd [2024] UKPC 11

バハマのマリーナに係留されていたモーターヨットRum N’Cokeが、所有者の関係者を装った者に持ち去られたため、保険金を支払った保険者Great Lakesが、代位によりマリーナ運営者RAVに損害賠償を求めた事案である。RAVは引渡しに際して来訪者の身元を確認していなかったが、係留契約では、盗難を含むあらゆる原因から船舶を保護する責任は所有者側にあると定められていた。 枢密院は、RA   続きを読む…

Unicious Energy Pte Ltd v Owners and/or Demise Charterers of The Ship or Vessel “Alpine Mathilde” (No 2)

米国財務省OFACの制裁対象者リストに指定された用船者Uniciousが、航海用船契約上の貨物引渡しを拒絶した船主に対する仲裁請求の担保としてAlpine Mathildeを差し押さえたところ、船主が不当差押えによる損害賠償を求めた事案である。貨物は制裁上の凍結財産となり、米国法人である船主は、Uniciousへの引渡しにより制裁を受ける危険があった。Uniciousは代理人を介した形式的な転売に   続きを読む…

RTI Ltd v MUR Shipping BV [2024] UKSC 18

米国制裁により契約所定の米ドル建て運賃の送金が困難となった場合、船主MURが不可抗力条項を援用できるか、また「合理的努力」として用船者RTIが提案したユーロ払いを受け入れる義務があったかが争われた事案である。契約は運賃を米ドルで支払うことを定め、不可抗力事由は、影響を受けた当事者の合理的努力によって克服できない場合に限り認められるとしていた。 仲裁廷及び控訴院多数意見は、RTIが為替費用を負担して   続きを読む…

Djurberg v Thames Properties (Hampton) Ltd and Others [2024] EWCA Civ 549

テムズ川の係留場所を使用させていた者が、未払係留料を担保するためハウスボートを留置する権利を有すると主張し、船舶が持ち去られたことについて占有権侵害による損害賠償を求めた事案である。原告は、その権利が海事先取特権に基づくと主張したが、第一審は請求を却下した。 控訴院は、留置権とは、物に関する債権が弁済されるまでその物の占有を保持する権利であり、占有を失えば留置権自体は消滅するものの、留置権を無視し   続きを読む…

Maersk A/S v Allianz Seguros y Reaseguros SA (Joined Cases C-345/22 and C-347/22); Mapfre España Compañía de Seguros y Reaseguros SA v MACS Maritime Carrier Shipping GmbH & Co (Case C-346/22)

貨物損害について荷主の権利を代位取得した保険者がスペイン裁判所で運送人を訴えたところ、船荷証券に英国裁判所を専属管轄とする条項が含まれていたため、当該条項が船荷証券の第三取得者にも対抗できるかが争われた事案である。スペイン法は、第三取得者が船荷証券上の権利義務を承継しても、裁判管轄条項については個別かつ別途の合意がない限り拘束されないと定めていた。 EU司法裁判所は、ブリュッセルI bis規則25   続きを読む…

Sharp Corp Ltd v Viterra BV (previously known as Glencore Agriculture BV) [2024] UKSC 14

買主Sharpが豆類の代金を支払わなかったため、売主Viterraが被った損害を、どの市場価格を基準に計算するかが問題となった。貨物はカナダからインドのムンドラ港に到着し、既に荷揚げ・通関され、倉庫に保管されていた。その後、インド政府が輸入関税を引き上げたため、貨物のインド国内での価格は大きく上昇していた。 仲裁廷は、損害額を、カナダのバンクーバーで同じ貨物を買い、そこからムンドラまで運ぶ費用を基   続きを読む…

Delos Shipholding SA and Others v Allianz Global Corporate and Specialty SE and Others [2024] EWHC 719 (Comm)

インドネシア領海内に無許可で錨泊した船舶Win Winが同国海軍に約11か月間拘束されたため、船主らが戦争・政治リスク保険に基づき、推定全損として保険金を請求した事案である。保険者は、拘束は船長らの自発的行為によるもので偶然性がないこと、約款上の免責事由に該当すること、船主らの対応が拘束を長期化させたこと、及び重要事項の不告知を主張した。 裁判所は、船長らは錨泊地点がインドネシア領海内であることを   続きを読む…

Yacht Management Co Ltd v Gordon and Another [2024] EAT 33

英国に拠点を持たないヨット管理会社YMCに雇用され、世界各地を航行するスーパーヨットで勤務していた船員Gordonが、英国の雇用権法及び平等法の保護を受けられるかが争われた事案である。Gordonはアバディーンに居住し、同地から乗船地へ移動して勤務を開始し、休暇時には同地へ戻っていた。給与は英国の銀行口座に支払われ、契約は英国法準拠、英国裁判所の専属管轄とされていた。 雇用審判所は、Gordonを   続きを読む…

Burrows v Thurlow (The Merlion) [2024] FCA 220

新造ヨットの購入契約に際し、従前所有していたMerlionを下取りとして引き渡した買主Burrowsが、造船会社PMYの倒産後、同船が第三者Thurlowへ移転されたことから、自己がなお所有権又は直ちに占有を回復する権利を有するとして、船舶に対する対物訴訟を提起した事案である。争点は、信託違反、悪意の受領、所有権移転の仮装、横領及び消費者法上の請求が、豪州の海事裁判管轄に含まれるかであった。 裁判   続きを読む…

Dan-Bunkering (Singapore) Pte Ltd v The Ship Yangtze Fortune (No 3) [2024] FCA 219

裸用船中のYangtze Fortuneに燃料を供給したCMETが、司法売却代金への対物請求に参加しようとした事案である。豪州海事法上、裸用船者の債務について船舶に対する対物訴訟を提起するには、請求原因発生時だけでなく、訴訟提起時にも当該者が裸用船者であることが必要とされた。 CMETは、司法売却の条件が成立した2023年3月7日に裸用船契約が履行不能となり終了したため、その時点を基準として売却代   続きを読む…

COSCO Shipping Specialized Carriers Co Ltd v PT OKI Pulp & Paper Mills and Others [2024] SGHC 92

船舶Le Liがインドネシアの港湾施設から離岸した直後にトレッスル橋へ衝突し、橋の一部を崩壊させた事故について、橋の所有者OKIがインドネシアで提起した不法行為訴訟を、船主CSSCが船荷証券中のシンガポール仲裁条項に反するとして差し止めようとした事案である。 船荷証券には、ヘッドCOAの英国法準拠・シンガポール仲裁条項が組み込まれていた。もっとも、裁判所は、OKIの請求は貨物の運送や船荷証券上の義   続きを読む…

Owners of or Other Persons Interested in the Cargo Lately Laden Onboard Jeil Crystal v Owners of the Vessel Jeil Crystal (The Jeil Crystal) [2024] SGHC 74

銀行BCGEが貿易金融の担保として取得した船荷証券について、運送人が別の船荷証券へ切り替えたことにより担保価値を失ったとして、船主に損害賠償を求めた事案である。BCGEは当初の船荷証券上の荷受人であったが、切替え前にこれを買主GPGへ裏書・交付していた。その後、当初の船荷証券は回収・無効化され、新たな船荷証券が発行された。 裁判所は、船荷証券上の契約請求権を行使できるのは、訴訟提起時にその適法な所   続きを読む…

SMIT Salvage BV and Others v Luster Maritime SA and Another (The Ever Given) [2024] EWCA Civ 260

スエズ運河で座礁したEver Givenの離礁作業について、SMITと船主との間に報酬条件を定めた契約が成立していたか、それとも契約のない救助として1989年海難救助条約に基づく救助報酬を請求できるかが争われた事案である。SMITは人員、機材及び曳船を投入して離礁に貢献したが、船主は、2021年3月26日のメール交換により技術支援契約が成立していたと主張した。 問題となったメールでは、SCOPIC   続きを読む…

Ayhan Sezer Yag ve Gida Endustrisi Ticaret Ltd Sirket v Agroinvest SA [2024] EWHC 479 (Comm)

菜種粕及び非遺伝子組換え大豆粕の売買契約について、買主が契約履行を拒絶した後、事前に支払った前払金が返還されるか、またGAFTA 100のデフォルト条項上の「債務不履行日」がいつかが争われた事案である。仲裁判断は、買主の履行拒絶が売主に受諾された5月7日を債務不履行日とし、前払金は返還不要のデポジットであるとした。 裁判所は、債務不履行日は履行拒絶が受諾された日ではなく、実際に拒絶がなされた日であ   続きを読む…

Southeaster Maritime Ltd v Trafigura Maritime Logistics Pte Ltd (The MV Aquafreedom) [2024] EWHC 255 (Comm)

タンカーAquafreedomの定期用船交渉において、リキャップ送付後に「Charterers’ management approval」及び「terms subject review both sides」とのsubjectが残されていたにもかかわらず、Trafiguraが拘束力ある用船契約が成立したと主張した事案である。 裁判所は、海運実務における「subject」は、契約成立前の   続きを読む…

KfW IPEX-Bank GmbH v Owner of the Vessel “World Dream” [2024] SGHC 56

大型クルーズ船World Dreamの司法売却後、船内のスロットマシンやカジノテーブル等のゲーム設備が船舶抵当権の対象に含まれるかが争われた事案である。船主側は、別船の抵当契約では「gaming equipment」が明記されていたのに対し、本船の抵当契約には明記されていないため、ゲーム設備は一般債権者に帰属すると主張した。 裁判所は、まず、船主側が対象となるゲーム設備を十分具体的に特定していない   続きを読む…

Denver Maritime Ltd v Belpareil AS (The Kiran Australia and The Belpareil) [2024] EWHC 362 (Admlty)

バングラデシュ・チッタゴン沖の錨地で、錨泊中のばら積船Belpareilが走錨し、同じく錨泊中のKiran Australiaと衝突した事故について、両船の過失割合が争われた事案である。Belpareilは機関不調のためKiran Australiaへ接近し、一度は離れたものの、再び機関が停止して衝突した。 裁判所は、Belpareilが危険な状況を作り出した主たる責任を負うと判断した。船舶が走錨   続きを読む…

Owner and/or Demise Charterer of the Vessel “A Symphony” v Owner and/or Demise Charterer of the Vessel “Sea Justice” [2024] SGHC 37

中国・青島沖でA SymphonyとSea Justiceが衝突し、船体・貨物損害及び油濁事故が発生したことから、A Symphony側がシンガポールでSea Justiceを差し押さえた一方、双方が中国でも責任制限基金を設立し、衝突責任を争っていた事案である。Sea Justice側は、シンガポール訴訟の停止、差押命令の取消し及び担保返還を求めた。 裁判所は、事故地が中国領海であり、中国法が適用   続きを読む…

Eurobank SA v Momentum Maritime SA and Others [2024] EWHC 210 (Comm)

船舶3隻を担保として約1,200万米ドルを融資した銀行Eurobankが、借入人らの返済不履行後、残債の支払を求めた事案である。担保船のうち2隻はジブチで多数の債権者により差し押さえられ、その後、港湾当局による私的売却を経て解撤された。借入人らは、銀行が担保船の処分に関与し、適正な市場価格を得る義務に違反したと主張した。 裁判所は、銀行が行ったのは、既に多数の差押えを受けていた本船を追加的に差し押   続きを読む…

Carmichael Rail Network Pty Ltd v BBC Chartering Carriers GmbH & Co KG (The BBC Nile) [2024] HCA 4

南オーストラリア州からクイーンズランド州へ海上輸送された鋼製レールが航海中に損傷したことについて、船荷証券中の英国法準拠・ロンドンLMAA仲裁条項が、オーストラリアの国内州間運送に適用される強行的な海上物品運送法制に反して無効となるかが争われた事案である。 船荷証券には英国法準拠及びロンドン仲裁条項が置かれていたが、本件運送にはCarriage of Goods by Sea Act 1991に基   続きを読む…

Bumi Jaya Salvage & Engineering Sdn Bhd v Brave Worth Shipping Co Ltd (The Kmax Pro) [2023] SGHCR 21

火災・座礁したKmax Proの貨物揚げ及び軽荷作業について、BIMCO WRECKSTAGE 2010に基づく段階払い契約を締結したものの、船主が前払金の一部しか支払わず、また有害廃棄物処理業者を手配しなかったため作業が中断された事案である。請負業者は欠席判決を取得したが、船主はこれを取り消すよう求めた。 裁判所は、WRECKSTAGE 2010は、日額払いのWRECKHIREと、全作業完了時に   続きを読む…

Herculito Maritime Ltd v Gunvor International BV (The Polar) [2024] UKSC 2

ソマリア海賊に拿捕されたPolarの解放のため支払われた身代金について、船主側保険者が貨物関係者に共同海損分担金を請求できるかが争われた事案である。用船契約では、アデン湾航行に必要な追加戦争保険料及び誘拐・身代金保険料を用船者が負担していた。貨物側は、この保険料負担条項により、当事者は損失を保険者に負担させる「保険コード」を設けたのであり、船主側保険者には代位請求権がないと主張した。 最高裁は、契   続きを読む…

Marchand Navigation Co v Olam Global Agri Pte Ltd and Another [2023] SGHC 339

定期用船者Sincoが支払うべき燃料代を船主Marchandが立替払いした後、Sincoが航海用船者Olamに対して有する滞船料債権について、NYPE第18条に基づく船主の先取特権が及ぶかが争われた事案である。OlamはSincoに19万112米ドルの滞船料を負担していたが、MarchandとSincoの双方から支払を求められたため、その帰属が問題となった。 裁判所は、第18条が「本用船契約に基づ   続きを読む…

Owner and/or Demise Charterer of the Vessel “A Symphony” v Owner and/or Demise Charterer of the Vessel “Sea Justice” [2023] SGHCR 24

中国・青島沖でA SymphonyとSea Justiceが衝突し、船体・貨物損害及び油濁事故が発生したことから、A Symphony側がシンガポールで対物訴訟を提起し、Sea Justiceを差し押さえた一方、双方が中国でも責任制限基金を設立して衝突責任を争っていた事案である。Sea Justice側は、シンガポール訴訟の停止、差押命令の取消し及び担保返還を求めた。 裁判所は、Spiliadaの   続きを読む…

AMS Ameropa Marketing Sales AG and Another v Ocean Unity Navigation Inc [2023] EWHC 3264 (Comm)

Doric Valourでルイジアナからエジプトへ運送された大豆貨物の一部が、隣接する燃料油タンクの過熱により損傷したとして、売主及び貨物保険者が運送人に損害賠償を求めた事案である。揚荷時の船荷証券の適法な所持人は買主Oilexであったが、その後、Oilexは運送契約上の請求権を売主に譲渡した。 裁判所は、貨物保険者である第2原告には独自の請求権がないとした一方、売主である第1原告には、Oilex   続きを読む…

Vallianz Shipbuilding & Engineering Pte Ltd v Owner of the Vessel “Eco Spark” [2023] SGHC 353

バージから洋上養殖施設へ改造されたEco Sparkが、シンガポール海事管轄法上の「ship」に該当し、対物訴訟による差押えの対象となるかが争われた事案である。改造業者は未払工事代金約164万シンガポールドルを請求して本件施設を差し押さえたが、所有者は、同施設は海底に脚を固定した自航能力のない魚類養殖場であり、航行に使用される船舶ではないと主張した。 裁判所は、「ship」は「航行に使用される船舶   続きを読む…

Mercuria Energy Trading Pte v Raphael Cotoner Investments Ltd (The Afra Oak) [2023] EWHC 2978 (Comm)

定期用船中のAfra Oakが、用船者から「Singapore EOPLで待機せよ」との指示を受けたにもかかわらず、インドネシア領海内に錨泊したため同国海軍に拿捕・抑留されたことについて、船主がヘーグ・ルール4条2項(a)の航海過失免責を主張できるかが争われた事案である。仲裁廷は、用船者の指示は安全なSingapore EOPLで待機する趣旨であり、インドネシア領海内での錨泊を許容するものではなか   続きを読む…

Star Axe I LLC v Royal and Sun Alliance Luxembourg SA and Others [2023] EWHC 2784 (Comm)

Congenbill 1994形式の船荷証券における「共同海損はYork-Antwerp Rules 1994又はその後の修正に従う」との条項が、2016年版York-Antwerp Rules(YAR 2016)まで取り込むかが争われた事案である。Star Antaresが航海中に水中の物体へ接触したため共同海損が宣言され、船主はYAR 1994の適用を、貨物保険者はYAR 2016の適用を主張   続きを読む…

Crédit Agricole Corporate and Investment Bank, Singapore Branch v PPT Energy Trading Co Ltd [2023] SGCA(I) 7- Singapore International Court of Appeal (Judith Prakash JCA, Jonathan Mance IJ and Bernard Rix IJ) – 24 October 2023

Zenrockによる原油取引の二重金融・価格偽装に関連し、信用状発行銀行CACIBが、受益者PPTへの信用状代金の支払を拒めるか、またPPTが提出した補償状(LOI)に基づきCACIBが損害賠償を請求できるかが争われた事案である。Zenrockは、実際より高額に改ざんした転売契約をCACIBに提示して信用状を取得していたが、PPT自身がその詐欺に加担したとは認められなかった。 国際商事控訴裁判所は   続きを読む…

Hyphen Trading Ltd v BLPL Singapore Pte Ltd – [2023] SGHC 302, High Court of the Republic of Singapore (Justice S Mohan) – 25 October 2023

約1,048万米ドル相当のニッケルブリケット貨物について、HTLとTIPLがそれぞれ正当な船荷証券所持人であると主張して所有権を争う中、倉庫保管中の貨物を紛争解決前に売却すべきかが争われた事案である。HTLは、貨物価値の下落、保管中の安全上の懸念及び倉庫費用の増加を理由に、売却代金を裁判所又はエスクロー口座に保管するよう求めた。 裁判所は、シンガポール民事訴訟規則上、動産が腐敗しやすい場合、価値が   続きを読む…